【8月11日 AFP】地球温暖化を抑制するための積極的な取り組みと、自然が残る英国の田園地方の見直し作業を連携して実施すること以外に、在来種のチョウの多くを救う方法はない──英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)にこのほど、英国で「干ばつに弱いチョウ個体群の広範囲に及ぶ絶滅が、早ければ2050年に起きる可能性がある」との研究報告が発表された。

 温室効果ガス排出を現状のまま継続する「現状維持シナリオ」の下では、特定の英国諸島(British Isles)在来種が2050年を越えて生存する確率は「ほぼゼロ」だと、研究は結論づけた。その一方で、原生地域の保護、特に自然生息地の断片化を減らすことにより、これらの極めて繊細な生き物の少なくとも一部に、生存のわずかな望みが与えられると思われるともしている。

 こうした対策について研究チームは、地球温暖化による気温上昇幅を2度未満に抑える国連(UN)の取り組みと連携して実施することで、チョウの生存確率が約50%にまで高まると述べている。

 英自然環境調査局(NERC)生態・水文センター(Centre of Ecology and Hydrology)のトム・オリバー(Tom Oliver)氏率いる研究チームは、1995年に発生した大規模な干ばつによってチョウ28種がどのような影響を受けたかを調べるため、129か所で採集されたデータを調査した。

 調査の結果、チョウ28種のうち、5分の1以上に大幅な個体数の減少がみられた。1995年の干ばつは観測史上最悪のものとなったが、同様の自然現象は今後、地球温暖化の進行とともに、その発生頻度が高くなると予測されている。

 最も影響が大きかった種は、ヒメヒカゲ、キマダラジャノメ、コキマダラセセリなどだった。

 この研究では、土地環境と個体数回復との直接的な関連性も見て取れた。生息地の断片化が進行するほど、個体数の回復に要する時間が長くなるのだという。

 オリバー氏は、AFPの電子メール取材に「集約農業の土地環境の中にある保護された『孤島群』は、チョウの生息には向かない。これらをただ管理するだけでなく、自然生息地の断片化を減らすことの重要性の認識が、自然保護論者らの間でますます高くなっている」と語った。

 英国のそれと同様に、工業化された農業の度合いが高く、同様の気候変動シナリオに直面しているその他の国に生息するチョウもまた、絶滅の危機にひんしている可能性がある。オリバー氏は、「すでに以前より高温乾燥化が進んでいる(地域では)干ばつの影響がはるかに深刻になる可能性がある」と指摘する。

 チョウは、炭鉱におけるカナリアと同様に、他種の昆虫に対する警告指標として用いられる場合が多い。

 オリバー氏によると、地球温暖化によって深刻化した干ばつが、ハチ、トンボ、甲虫類などの他の昆虫種に同様の影響を及ぼすとすると、地球の生物多様性の重要部分が危機にひんする恐れがあるという。そして「これら他の昆虫種の多くは、穀物を受粉させる、害虫を食べる、廃棄物を分解するなどの人間にとって重要不可欠な機能を提供している」と説明した。(c)AFP/Marlowe HOOD