アフリカ・トーゴの呪物マーケット、心霊治療家にすがる病人や政治家
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【8月10日 AFP】アフリカ西部トーゴの首都ロメ(Lome)の心霊治療家、ルシアン・イェクポンさんは、頭蓋骨や羽、小さな彫像などの呪物に囲まれ、患者の頭に手を置いて呪文を唱える。
患者のアドルフ・ハウンジさん(35)さんは3年間、片頭痛に悩まされていて、治療してもらおうと隣国ベナンからやって来た。イェクポンさんは「じきにすっかり良くなるでしょう」と話した。ロメに来てから3日でハウンジさんは、イェクポンさんの不思議な力を感じ始め「だいぶ良くなった」という。
さびれたアコデセワ(Akodessewa)地区の中央にある呪物マーケットは、西アフリカでよく知られた存在だ。ここでは、マラリアや腸チフス、勃起不全、ぜんそく、結核など、あらゆる病気が治療されている。この市場で治療にあたる心霊治療家や魔術師は100人ほどいるが、ほとんどがベナン出身だ。ベナンでは民間信仰のブードゥー(Voodoo)が広く受け入れられている。西アフリカではヴォドゥン(Vodun)とも呼ばれる。
動物の頭蓋骨や皮、爬虫(はちゅう)類の骨、羽などが並ぶ棚の奥には、ヴォドゥンの神をまつった複数の祭壇が置かれている。イェクポンさんは「この棚にあるものはすべて、私たちが作るものの原料だ。例えば、よく砕いた亀の甲羅をハーブ、蜂蜜と混ぜたものはぜんそくに効く」と説明した。
「病人は色々な所からやって来る。ここをひいきにしている白人もいる」。ただし、このマーケットを訪れる欧米人観光客は、心霊治療家に診てもらいたいというよりも、好奇心から、ちょっとのぞいてみたいという人がほとんどだ。
昨年、西アフリカ諸国でエボラ出血熱が流行したせいで、観光客の数は減った。ガイドのエリアス・ゲデナさんは「ここにあるもののほとんどは低木地帯(ブッシュ)の動物たち(エボラウイルスの主な感染源)に由来するから、観光客は逃げてしまった。でも、ここ2か月で少しずつ戻ってきた」と話す。
トーメから北へ100キロほど離れたパリメ(Kpalime)の心霊治療家、オリビエ・マセノンさん(35)は、ただ一つの目的のために遠路はるばる呪物マーケットへやって来た。「『アジザ』という強力な鳥の頭を3つ買った。性欲が弱いといって8年間、悩んでいる患者に薬を作るんだ」。この患者は「とりつかれて」いるため病院では絶対に治らないが、自分が治療すれば2週間で完全に回復すると語った。
著名な心霊治療家、ホウジェノウコン・ボコボさんによると呪物マーケットには、選挙が近くなると、別の種類の客が集まるという。「選挙で勝てるよう、お守りを作ってくれと政治家たちに依頼される」のだ。
ボコボさんによれば、アコデセワ地区の心霊治療家が客を断ることはほとんどないが「周りの人を傷つけるためにお守りを欲しがっている人」は拒まれると話した。(c)AFP/Emile KOUTON