見せ物にされたクマたち、心の傷癒やす保護区へ ルーマニア
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【7月29日 AFP】クマの「ムラ」は、サーカスでの5年間にわたる虐待の末、演技を拒否するようになり、ルーマニアのカルパティア山脈(Carpathian Mountains)にある世界最大のヒグマ保護区「リベアティー(Libearty)」へと移された。ここでは、以前の所有者によって檻に入れられ、暴力を振るわれ、餌も与えてもらえなかった80頭のクマが、心の傷を癒やしている。
だがそのプロセスには時間がかかる場合もある。たとえば、ムラは食事の時間になると反射的に踊りだす。「彼女はいまだに、踊らないと餌をもらえないのではないかと恐れている」と、保護区でガイドを務めるパウラ・チョトロシュ(Paula Ciotlos)さんはAFPに語った。
首都ブカレスト(Bucharest)のグローバス(Globus)サーカスに出演し始めて5年たったある日、ムラはパフォーマンスをかたくなに拒み始め、ついに所有者によって保護区へ引き渡された。
広さ69ヘクタールの同保護区は、2005年に設立された。きっかけとなったのは、残酷な飼育環境に耐えかねた「マイア」というクマが自傷行為によって死に至り、人々の大きな怒りを呼んだことだった。
最初に保護区にきたクマは、「リディア」と「クリスティ」だった。2頭はあるレストランで7年間、広さ5平方メートルの小さな囲いに一緒に入れられ、客は2頭にビールを飲ませたりして楽しんだ。彼らの足にはまだ、ビールグラスで切れた傷痕が残っている。
保護区にいるクマにはすべて「悲しいが、教育効果のある」過去がある、とチョトロシュさんは言う。保護区は現在、飼育下にある動物たちについての新たな知見を提供するため、1日3時間限定で観光客に公開されている。
保護区の土地は、ザルネシュティ(Zarnesti)市から寄付されたもの。クマのための森林や池が十分にあり、1日1回、スタッフが餌やりをしている。これまでに200万ユーロ(約2億7000万円)が保護区に投じられてきた。2014年の訪問客は2万人以上、うち約60%が外国人だった。