【7月24日 AFP】英出版大手ピアソン(Pearson)は23日、傘下の英経済紙フィナンシャル・タイムズ(Financial TimesFT)を8億4400万ポンド(約1600億円)で日本経済新聞社(Nikkei)に売却すると発表した。このサプライズ買収について日経新聞側は、デジタル事業を柱としたグローバル拡張戦略の一環であり、経済分野における「アジアのリーディング・メディア」となるという目標を示すものだと説明。だが一方で、この異国のメディア同士の思いもよらぬ融合は、1888年創刊の歴史あるFTの編集権の独立に関する懸念も呼んでいる。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)や米経済通信社ブルームバーグ(Bloomberg)などの大手経済メディアに対抗しようとする日経は、FTの買収により、世界的に知名度の高いブランドと22万5000部の発行部数を手に入れることになる。オンライン購読者は日経とFTを合わせ、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の91万人を超える。

 だが、日経によるFT買収は文化の衝突を招くかもしれない。日経新聞は、企業の収益結果やその他のニュースを公式発表の数週間前に特権的に入手しているとされ、FTを含む各メディアから批判を受けてきた。さらに日本のメディアは、調査報道に及び腰で、衝突や反感を避けて自己検閲する傾向があるとして、たびたび批判を受けている。

 ニューヨーク・タイムズ紙のある記者はツイッター(Twitter)で、「心配だ。日経はいわば日本企業のPR装置で、2011年のオリンパス(Olympus)の不正会計事件も当初は無視していた(FTはすぐ報じた)」と述べた。

 過去にFTで政治部長と金融部長を務めていた英国放送協会(BBC)のロバート・ペストン(Robert Peston)経済部長も、「もし私が今もFTにいたとしたら、すべての権力の責任を追及する文化(たとえFTが、他の皆と同じく、しばしばそれに失敗するとしても)を尊重するのか、日経に問うだろう」と、ツイッターで懸念を表明した。

 一方、日経新聞の岡田直敏(Naotoshi Okada)社長は24日に都内で開いた記者会見で、日経がFTの記事の判断に介入することはしないと述べ、不安払しょくに努めた。岡田社長はFTの編集権について「独立を維持する」と表明。喜多恒雄(Tsuneo Kita)会長も、FTの紙面や内容を変える方針はないと語った。(c)AFP