石油掘削排水を農業用水に転用、発がん性物質などリスクに警告 米カリフォルニア州
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【7月25日 AFP】記録的な干ばつに見舞われている米カリフォルニア(California)州で、農家が石油会社から供給される排水をかんがい用水として使用していることに対し、そうした排水には有害物質が含まれており危険だとする環境活動家らから強い批判の声が上がっている。
問題の地域は、カリフォルニア州セントラル・バレー(Central Valley)南部に位置するカーン(Kern)郡のベーカーズフィールド(Bakersfield)。油田が広がる近くに果樹園の木々が並んでいる。
環境正義の実現などに取り組む団体「人種、貧困、環境のためのセンター(Center on Race, Poverty and the Environment)のマデレン・スターノ(Madeline Stano)氏によれば、カリフォルニア州の石油生産の80%と、農産物生産の45%が、このカーン郡に集中している。
一方、この地域は夏期、気温40度を超えることも少なくなく、水不足に陥りがちだ。しかも4年連続で記録的な干ばつが続いている現在、水位が下がりすぎた川からの水を引くことはできず、地下水の井戸も1000か所以上が干上がっている。
そうした中、農業用水の調達先を多様化するため、地元農家が出資する配水事業協同組合「カベロ・ウォーター・ディストリクト(Cawelo Water District)」は20年前より、石油会社の排水を買い取っている。
米石油大手シェブロン(Chevron)の広報担当、アビー・オーファント(Abby Auffant)氏の説明によれば、掘削時の原油には水が混在しており、原油と水を分離する必要があるため排水が生じる。シェブロンは、日量50万バレル程度の排水をカヴェロ・ウォーター・ディストリクトに売却。同組合が取り扱っている水の半分はシェブロンから購入している。
排水は、ろ過システムで浄化した後、貯水槽へ送り、他の石油施設からの排水と合わせる。これに真水を混合した上で地元農家やブドウ園90か所に供給されている。カベロのデービッド・アンソラベヘーレ(David Ansolabehere)理事によれば、農家の買い取り価格は1233立方メートル当たり33ドル(約4000円)前後。同質の真水を買おうとすれば、最大1500ドル(約18万5500円)かかるという。こうした取引は完全に合法で、シェブロンの他、オクシデンタル・ペトロリアム(Occidental Petroleum)などの競合他社も排水売却の許可を当局から得ている。石油企業側は第三者による水質調査を行い、その結果を州当局に提出している。
だが、環境活動家は異なった見方をしている。「人種、貧困、環境のためのセンター」のスターノ氏は「シェブロン独自の報告の中で、農家に売却される水に発がん性のあるベンジンとアセトンが含まれていることを突き止めた」と述べ、その他の危険な化学物質もシェブロンの調査では検出できていないと主張している。
カベロのアンソラベヘーレ理事によれば、シェブロンの報告で、農家に売却される水の塩分含有量が「やや高い」ことが判明したため、今後、州当局により作業部会が設置され、農産物の試験が命じられる見通しだ。作業部会は、化学物質が作物の根や葉、果実に含まれていないかどうかについても検証するという。
農業従事者で環境活動家のトム・フランツ(Tom Frantz)さんは「誰かが病気になれば、皆しばらく、カーン郡産の作物は買わなくなってしまうだろう」と話した。(c)AFP/Veronique DUPONT