白内障に「点眼薬」、手術なしの治療に期待 研究
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【7月23日 AFP】人間の失明の最大原因となっている白内障を、手術をせずに点眼薬だけで治療できる可能性を示した動物実験の結果が22日、発表された。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、「ラノステロール」と呼ばれる自然界に存在する分子を点眼薬として投与すると、イヌの白内障に縮小がみられたという。
症状が徐々に進行する眼病の白内障の患者数は世界で数千万人に上り、治療法は現在のところ手術しかない。通常、白内障の手術は安全性が高く、決して難しいものではないが、その一方で、人口の高齢化に伴い、手術を必要とする患者の数は、今後20年間で倍増することが予想されている。
今回の潜在的治療薬に至るまでの一連の研究は、遺伝性の白内障に悩まされている家族の子ども2人を対象に始められた。2人は、研究を率いる中国・中山大学(Sun Yat-sen University)の張康(Kang Zhang)氏の患者だった。
張氏と研究チームは、この2人の患者に、ラノステロールの生成に大きく関与する遺伝子に共通の変異がみられることを発見した。これにより、白内障を形成するタンパク質が正常な目の中で凝集するのを妨げる効果がラノステロールにあると推測した。
研究では、細胞を用いた最初の一連の実験で、ラノステロールがタンパク質の凝集を防ぐ助けになるとの直感に対する裏付けが得られた。
次に行った実験では、白内障を自然に発症したイヌに、ラノステロール分子を含む点眼薬を投与した。
研究チームの報告によると、6週間の治療後、白内障の大きさと特徴的な白濁度が減少したという。
「今回の研究は、ラノステロールを水晶体タンパク質凝集の防止に重要な役割を担う分子として特定するとともに、白内障の予防と治療に対する新たな戦略を指摘するものだ」と論文の執筆者らは結論付けている。
白内障は、世界の失明症例の半数の原因となっている。(c)AFP