「生き神」生活を続ける女性、ネパール地震で初めて歩く
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【7月25日 AFP】今年4月にネパールが大地震に見舞われたとき、同国で最も長く生き神「クマリ(Kumari)」の地位にあった女性が思いも寄らない行動に出た――彼女は生まれて初めて、道を歩いたのだ。
2歳で俗世間から離れ、今もその生活様式を守っているダナ・クマリ・バジラチャルヤ(Dhana Kumari Bajracharya)さん(63)は、AFPに取材に応じ、クマリとしては異例の30年間に及ぶ生活について語った。1980年代にクマリを解任されたときのうずくような痛みは今も消えないという。
4月25日にマグニチュード(M)7.8の大地震が起きる前は、バジラチャルヤさんが公の場に姿を現すのは、華麗な装飾が施された木製のみこしで運ばれるときだけだった。
「クマリ」と呼ばれるネパールの女性の生き神たちは、ヒンズー教と仏教の要素を融合した風習に縛られて隠とん生活を送り、めったに人前で話をすることはない。
しかし、大地震で大地が揺れ、建物が崩壊し、数千人が死亡する被害が出たとき、バジラチャルヤさんは、首都カトマンズ(Kathmandu)南部の歴史の古い町パタン(Patan)にある住居を30年ぶりに離れた。しかも、徒歩で。
「あんな形で住まいを離れるとは思ってもみなかった」と話すバジラチャルヤさんは、8800人以上が犠牲になった大地震のショックを今も引きずっていた。「恐らく、人々が以前ほど伝統を重んじていないことに、神々がお怒りなのだろう」
大地震がネパールを引き裂くと、バジラチャルヤさんの5階建ての住まいは揺れたが、家族は屋内にとどまった。クマリを引退したバジラチャルヤさんが、伝統を破って家族と一緒に外に歩いて出るかどうか、様子をうかがったのだ。
めいのシャニラ・バジラチャルヤ(Chanira Bajracharya)さんは、「私たちは、他の人たちのように家を離れることはできなかった。おばのことを考えなければならなかったから。どうしていいのか分からなかった」と語った。
「でも、自然がそれを強いるならば、成し遂げることができる」