【7月20日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)の解剖学者アウグスト・ヒルト(August Hirt)の犠牲者の遺体から採取されたサンプルが、フランス東部の法医学機関で発見された。地元当局が18日、声明で明らかにした。

 1943年にユダヤ人86人がガス室に送られ、その遺体が、当時ナチス占領下にあり、ヒルトが死体の収集をしていたフランス東部ストラスブール(Strasbourg)に送られた。

 ストラスブール解放後の1944年11月に見つかった遺体は無傷のものもあれば切断されたり焼かれたりしたものもあり、蒸留アルコールが入った瓶に入れられていた。これらは検視の後1946年に共同墓地に埋葬された。

 だが今月9日、歴史家のラファエル・トレダノ(Raphael Toledano)氏が、70年以上も同研究所で未発見のまま残されていた遺体を発見した。

 トレダノ氏は、同研究所の現在の所長ジャン・セバスチャン・ラウル(Jean-Sebastien Raul)氏とともに、「あるガス室犠牲者の複数の皮膚片を入れた瓶」をはじめとするいくつかの人体の一部の身元の確認に成功した。犠牲者の腸と胃を入れた試験管も見つかった。

 研究所で新たに見つかった遺体は、ストラスブール大学(University of Strasbourg)医学部の法医学教授だったカミーユ・シモナン(Camille Simonin)氏が、ヒルトが関与した犯罪の調査の一環として保管していたものだった。シモナン教授は「犠牲者が死亡するに至った状況を解明するため」、軍当局から司法解剖を委託されていた。

 シモナン教授が1952年に書いた手紙は「(フランスで唯一ナチス・ドイツの強制収容所があった)ストリュートホフ(Struthof)のガス室で犠牲になったユダヤ人の司法解剖で採取されたサンプルを入れた瓶について言及しており」、トレダノ氏はそこから遺体の在りかのヒントを得た。

 遺体の発見を発表した声明によると、見つかった瓶などには詳しいラベルがつけられており、107969と言う登録番号が書かれていたという。声明は「これは86人の犠牲者の一人、メナヒェム・タッフェル(Menachem Taffel)さんがアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所で前腕に入れ墨で入れられた番号と一致する」としている。

 地元当局は新たに見つかった遺体をストラスブールのユダヤ人コミュニティーに返還する計画。遺体は他の犠牲者と同じくストラスブールの西にあるクローネンブルグ(Cronenbourg)の墓地に埋葬される。

 ヒルトは1945年、ナチス・ドイツの指導者に対する国際軍事裁判ニュルンベルク裁判(Nuremberg Trials)が始まる前に自殺した。(c)AFP