脱獄したメキシコ麻薬王は「生ける伝説」、故郷では英雄扱い
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【7月13日 AFP】メキシコの刑務所から再び脱走した「麻薬王」、ホアキン・グスマン(Joaquin Guzman)受刑者(58)――2001年の前回脱獄時には、同受刑者を英雄視する歌が作られた。その歌に、新たな1節が加えられることになりそうだ。
メキシコ最大の麻薬密売組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」の最高幹部で、「エル・チャポ(El Chapo)」の別名で知られるグスマン受刑者は、生まれ故郷の北西部シナロア(Sinaloa)州で、まるで中世英国の伝説的義賊ロビン・フッド(Robin Hood)のような英雄的イメージを作り上げてきた。昨年2月に当局が身柄を拘束した際には、シナロア州で支援者らが抗議デモを行ったほどだ。
2001年、グスマン受刑者はメキシコ西部ハリスコ(Jalisco)州の刑務所から洗濯物のカートに隠れて脱獄。13年間の逃走生活中に、世界を股に掛けた「麻薬密売帝国」を築き上げ、メキシコでも最も残忍な麻薬組織に数えられるシナロア・カルテルの「生ける伝説」となった。
■ミスコン女王と結婚
メキシコには「ナルココリード」と呼ばれる麻薬密売人を題材にした物語り歌があるが、口ひげをたくわえた麻薬王「エル・チャポ」にささげる歌が幾つも作られた。
グスマン受刑者は逃亡中の2007年、ミスコン優勝者のエマ・コロネル(Emma Coronel)さん(当時18)と結婚。複数の女性との間に10人の子どもがいるとされる。
逃亡中の身でありながら、故郷シナロア州では堂々とレストランに出入りしていた。店内にいた客たちに携帯電話を自分のボディーガードに預けるよう求めると、ゆっくりと食事を済ませ、その場にいた客全員の分まで支払いをしてレストランを後にしたという。
■フォーブス番付にも登場
大量のコカインやヘロイン、マリフアナを米国へ密輸したグスマン受刑者は、米シカゴ(Chicago)でも「公共の敵ナンバー1(Public Enemy Number One)」として知られている。この異名は、禁酒法時代の米国で暗黒街の帝王として知られたアル・カポネ(Al Capone)に与えられたのが最初だが、シカゴ犯罪委員会(Chicago Crime Commission)は2013年2月、グスマン受刑者について「殺りくと社会秩序の破壊の規模は、カポネを容易に上回っている」と述べている。
また、グスマン受刑者は2012年まで、米経済誌フォーブス(Forbes)の世界長者番付に名を連ねていた。2013年の番付から脱落したのは、資産の大半を逃亡中の身辺警護に費やしたためとみられている。
ただし、フォーブス誌の「最も影響力のある人物」ランキングでは、現在も67位にランクインしている。(c)AFP/Leticia PINEDA