【7月5日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)は4日、同組織が制圧したシリアの古代都市パルミラ(Palmyra)にあるローマ式円形劇場で、シリア政府軍兵士25人が、複数の10代の少年兵に処刑される動画を公開した。

 動画は、ISが今年5月21日にパルミラを制圧した直後に行った処刑の様子を撮影したものと報道されている。動画では、緑と茶色の迷彩服を着た兵士が、円形劇場のステージ上で、ISの巨大な黒と白の旗を前に銃殺される場面が捉えられている。

 処刑を行ったのは子供、または10代の少年とみられ、砂漠用迷彩服を着て、頭に茶色のバンダナを巻いている。処刑は、劇場の座席にまばらに着席した男性と子供たちの目前で行われた。

 報道によると、ISはパルミラ制圧の前後に同市内や周辺の町で一般市民を含む200人以上の処刑を行った。円形劇場での処刑は、ISがパルミラを制圧して1週間に満たない今年5月27日、英国を拠点とする非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によって報告されていた。

 当時、シリアのシリア遺跡管理当局のマムーン・アブドルカリム(Mamoun Abdulkarim)局長は、ISによる処刑が「パルミラの古代遺跡破壊を開始する前触れではないか」と恐れていると発言していた。アブドルカリム局長は、「古代ローマの円形劇場で人々を処刑するなどという行為は、人間性に欠けている証拠だ」とAFPに語った。

 グレコローマン(Greco-Roman)様式のパルミラ遺跡は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)として登録されており、ISによるパルミラ制圧により貴重な古代遺跡の運命を危ぶむ国際的な懸念が高まっている。

 ISは現在までに古代遺跡自体を破壊した形跡こそないが、市内にあるイスラム教の霊廟を爆破したほか、パルミラ博物館(Palmyra Museum)前に置かれていたライオン像を破壊した。

 ISは専門家が「グループの主要なプロパガンダの道具」と呼ぶ、巧みに制作された残虐な大量処刑の動画を定期的に公開している。(c)AFP