【7月1日 AFP】霧を新鮮な水に変えるグリーン技術のおかげで、モロッコ南西部の女性たちは毎日遠くの井戸まで水汲みに行く必要がなくなった。

 五つの高地にあるベルベル人のコミュニティーがこの「霧の収穫」技術の恩恵を受け始めている。アンデス山脈が広がる南米チリで20年前に考案され、その後、ペルーやナミビア、南アフリカなどに広がった技術だ。

  モロッコの村々を見下ろすようにそびえるBoutmezguida山の頂上(標高1225メートル)には、濃い霧がかかっているが、それを約40枚のメッシュパネルで受け止めて水にし、パイプに流す仕組みだ。

 アンチアトラス(Anti-Atlas)山脈に位置する乾燥した山岳地帯で、家の蛇口から水が出てくるなんて「革命的」だと、開発と教育、文化のための地域連合「Dar Si HmadDSH)」のアイサ・ダーラム(Aissa Derhem)会長はいう。DHSが誇るのは「世界最大の霧水捕集・配水システム」だ。干ばつと雨不足に悩まされてきたシディ・イフニー(Sidi Ifni)の人々が、このシステムを運用するのを支援している。「ここにいる私たちにとって、雨とは霧のことなのです」という。

 捕集パネルを霧が覆うと、小さな水滴が目の細かい網に「捕まる」。これを掘削で得た水と混合し、パイプのネットワークを通じて、ふもとの村へ供給する。

 ダーラム氏がこの技術を初めて知ったのは、20年前のことだった。それから数年後、故郷のシディ・イフニーに戻ったとき、気候が南米のアンデス地方と似ていることに気づいた。

 DSHは、途上国支援を行っているカナダの団体「フォッグ・クエスト(Fog Quest)」と協力。北アフリカ初の試験事業に着手するまで、技術改良に10年近くを要した。

 シディ・イフニーの蛇口から最初に水が流れ出たのは、3月22日、「世界水の日(World Water Day)」だった。以来、「92世帯、約400人」が家庭で水道の恩恵を受けていると、プロジェクトの技術責任者、ムニール・アッバール(Mounir Abbar)氏はいう。プロジェクトは他の村にも拡大される予定で、モロッコ全体への導入も期待されている。

 ドゥアル・イド・アシュール(Douar Id Achour)村では、住民たちが新しい水道を誇りに思っている。以前、女性や子供たちは平均4時間かけて井戸まで水汲みに行っていた。乾いた夏の日には、それ以上歩いたものだ。「私は20リットルのバケツ2個を持って、1日4往復していた」と、マスーダ・ボッカルファ(47)さんはいう。「牛がいるために、その160リットルでも十分じゃなかった」。

 干ばつ時には、水はタンカーで運ばれてきた。「5000リットルの水が来るのに2週間かかり、150ディルハム(約2000円)を払った」という。DSHによれば、今では霧から7000リットルの水を得ており、コストは以前の3分の1だという。

 ドイツの慈善団体「水基金(Wasserstiftung)」の支援で、パネルはモロッコの気候に合わせて仕上げられ、試験段階も無事終了した。DSHの次の目標は、地域のできるだけ多くの村に霧の水を供給することだ。またパネルの網を、風速33メートルの風に耐えられる網に交換する計画もある。 (c)AFP/Zakaria CHOUKRALLAH