レコード盤を復活させるチェコの村
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【6月29日 AFP】チェコの小さな村が、レトロなレコード盤の世界的ブームの中心地になっている。古いレコードプレス機を使って、マドンナ(Madonna)からローリング・ストーンズ(Rolling Stones)までロックスターたちのレコードを作っているのだ。
CDやデジタル音楽の普及にもかかわらず、地元企業のGZメディア(GZ Media)はこの古い機械を使い続けることにした。その選択は功を奏し、世界で毎年売られている何百万枚ものレコード盤を製造している。レコード・コレクターや音楽ファンたちは、サウンドにより温かみがあり美的価値も高いとして、欧米や日本でのレコード復活に一役買った。
「私たちは昨年約1400万枚のレコードを作った。世界最多だ」と、GZメディアの販促ディレクター、ミハル・ニェメツ(Michal Nemec)氏はいう。「1980年代から90年代にCDがブームになったが、先見の明があった誰かが、古いレコードプレス機を倉庫に保管しておくことにした。素晴らしい決断だった」
チェコの首都プラハ(Prague)郊外の渓谷にある人口1800人の村、ロジェニツェ(Lodenice)から、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)やクイーン(Queen)、U2などトップアーティストたちのレコードが大量に生み出されている。
GZメディアが最初のレコードをプレスしたのは1951年のこと。今使っている機械の大半は、1960~70年代に製造されたものだ。「レコードが復活している」と、国際レコード産業連盟(International Federation of the Phonographic Industry、IFPI)のチェコ支部は2014年の年次報告書に記した。同報告によれば、チェコではアルバム売り上げの7%をレコードが占め、最大のレコード市場である米国では6%を占める。「メジャーな歌手やバンドでレコード盤を作らずに新譜をリリースするアーティストはいない」という。
「この4年間で私たちのレコード生産は年間25~30%伸びている。この傾向が劇的に変わるとは予想していない。少なくとも今後2年間は」と、ニェメツ氏はいう。同氏は売上高については明かさなかったが、同社最大の契約はローリング・ストーンズのファンクラブ用にアルバム約30枚組のデラックス・ボックスを作ったときだと述べた。「ビニール盤は中音域の音が出やすい。それがより温かく、味のあるサウンドになる」という。
急速に拡大しているとはいえ、レコード盤は150億ドル(約1兆8500億円)規模の世界の音楽市場の2%を占めているにすぎない。GZメディアにとっては、米国市場が最大の得意先だ。昨年、米国へはLP盤を約500万枚輸出した。英国とドイツがこれに続いている。「毎週金曜日に8~10トン分のレコードを積んだ飛行機が、カリフォルニア(California)州に向けて飛び立っている」と同社販売部長のヤナ・ブレジノワ(Jana Brezinova)氏はいう。
レコードといえば、黒い円盤しかなかったのは昔の話。今では同社で生産されるレコードの4分の1が、ハートや星の形をしていて、カラフルなものや柄のついたものも多い。例えば、ボブ・ディラン(Bob Dylan)のレコードの1枚は、水色のギターピックの形に仕上げた。
「特別なリクエストにも応えている。ある米国のロックグループが、亡くなったギタリストの遺灰をレコードに混ぜてくれと頼んできたこともあった」とニェメツ氏は語った。(c)AFP/Jan Marchal