【6月23日 AFP】世界的に有名な韓国の小説家、申京淑(シン・ギョンスク、Shin Kyung-Sook)氏(52)が、三島由紀夫(Yukio Mishima)の小説を盗作したとの疑惑をめぐり謝罪した。韓国メディアが23日、報じた。

 ベストセラー小説「母をお願い(Please Look After Mom)」でアジアの権威ある文学賞「マン・アジア文学賞(Man Asian Literary Prize)」を12年に受賞した申氏は、韓国文学を代表する存在だが、先週に盗作疑惑が浮上して以降、韓国世論の怒りの的となっている。

 発端となったのは、文学評論家イ・ウンジュン(Lee Eung-Jun)氏が先週インターネット上の投稿で、申氏が1996年に発表した短編小説「伝説(Legend)」に三島の1960年の作品「憂国(Patriotism)」の一段落が含まれていると指摘したことだった。この疑惑を受け、韓国では激しい議論が巻き起こり、ソウルの検察当局に詐欺罪で申氏を捜査するよう求める活動家まで現れた。

 先週の段階で申氏は「憂国」は読んだことがないと述べ盗作を否定していたが、23日に韓国紙・京郷新聞(Kyunghyang Shinmun)に掲載されたインタビューでは、自分の記憶が信じられなくなったとして盗作の可能性を認めた。この中で申氏は「2つの小説の文章を繰り返し読み比べた…これについて盗作の問題を提起することは妥当だとの考えに至った。こうした状況を作ったのは自分の過ちであり申し訳ない」と述べた。

 2つの小説はともに20世紀初期の若い新婚夫婦の愛と死を中心に展開している。今回、疑問が呈されたのは、夫婦間の性愛を描いた段落だった。該当する小説が入っている短編集の版元出版社は23日、AFPの取材に対し、同短編集の増刷を即刻中止する方針を明らかにした。(c)AFP