【6月22日 AFP】債務問題に揺れるギリシャでは、悲観的で暗い経済ニュースばかり報じる新聞にうんざりした国民のメディア離れが進んでいる。一般市民の関心は、日々の生活に残されたものとどうやって折り合いを付けていくかということだけだ。

 人々は皆、平常心を保ち、とりあえず前に進む自分なりの対処法を身に付けている。

「昨日、突然ひらめいたの。もうどうでもいいじゃないって。それまでは不安でたまらなかったけど、今はなるようになるって気分よ」。首都アテネ(Athens)で清掃業の仕事をしている50代女性、マリア・マイコポウロウ(Maria Maikopoulou)さんは、ほうきを片手にそう話した。ギリシャがユーロ圏を離脱することになっても何も怖くないという。

「(もしそうなったら)数年間は大変だろうけど、まあ、今1歳8か月のうちの孫娘が大人になるころには暮らし向きも良くなって、借金をしょい込むこともなくなっているわよ」。毎月の稼ぎの半分は、失業中の息子と娘に仕送りしているという。

 一方、アテネのプールで働くドイツ生まれの水泳インストラクター、ディア・カザーキ(Dia Kazaki)さん(50)は、「彼らはいつまで私たちに過剰な負担をかけるの。もう十分に支払ったでしょう」と、国際債権団を率いるドイツへの憤りをあらわにした。ユーロ圏を離脱したら、(旧ギリシャ通貨)ドラクマをまた使えばいいだけだと主張する。

「私たちには、まだ土地も、帰るべき村もある。もし帰る村がない同胞がいるなら、うちの村にいらっしゃいと言うし、ニワトリを一羽も持っていない人がいれば、私のを分けてあげるわ。この団結力が私たちの強みよ!」

 コーヒーカップの中に将来を託す人もいる。アテネ郊外で小さな喫茶店を経営しているマイリ・コントロウリ(Mairi Kontolouri)さんは、訪れる客に「コーヒー占い」を提供している。ギリシャでは、紅茶の茶葉を使った一般的な「紅茶占い」の代わりに、コーヒーの出し殻を使う占いが人気だ。店内はいつも人であふれている。

 かつては記者だったが失業し、1年半前にこの店を開いたコントロウリさん。「うちでは、個人の未来だけではなく、国の未来も占うの。ギリシャがユーロ圏を離脱するかどうかを語れるのは、アレクシス・ツィプラス(Alexis Tsipras)首相だけじゃないのよ」と冗談を飛ばした。(c)AFP/Sophie MAKRIS