【6月17日 AFP】ロシアが宇宙開発分野で再び取り戻した威信を見せつけ、あわよくば最近の失政から目をそらさせようとのもくろみで、旧ソ連時代以来使用してきたカザフスタンのバイコヌール宇宙基地（Baikonur Cosmodrome）に代わるロシア独自の打ち上げ施設を建設しようというプロジェクトが、数々の不祥事に見舞われている。

 ウラジーミル・プーチン（Vladimir Putin）大統領がロシア史上最大規模の建設プロジェクトとうたい、予算規模3000億ルーブル（約6800億円）とされるボストーチヌイ（Vostochny）宇宙基地の建設工事は、2012年に極東地方のアムール（Amur）州で開始された。

 以来、1万人の作業員が、広大ながら、ほとんど人が住んでいないこの地方に115キロの道路、125キロの線路、2万5000人分の住居をせっせと建設してきた。プロジェクトを担う国営建設会社「スペツストロイ（Spetsstroi）」を監督するのは国防省、そして最終的にはプーチン大統領だ。道路や軍事および国家の安全保障上必要な施設の建設に当たっている。今年12月には初めての打ち上げが予定されており、2018年には有人宇宙船の打ち上げを目指している。

■賃金未払いや工期の遅れ、学生も工事に投入

 一方で4月16日、プーチン大統領が国民と電話で対談するテレビ番組で、ボストーチヌイ宇宙基地をめぐる汚職問題が明るみに出た。基地の建設現場で働く労働者の何人かが大統領に対し、労働契約を結んでいた会社が倒産して失業し、4か月分の給料が支払われていないと訴えたのだ。

 当局は急きょ、未払い資金を解消するために緊急の資金投入を発表。5月18日には、基地の工事の請け負い業者を2億8800万ルーブル（約6億6000万円）に上る横領の疑いで拘束し、自宅軟禁下に置いた。

 加えて工期の遅れから、5月には学生130人が建設作業に動員された。さらに1000人が夏休みを利用して作業に加わることになっている。それでも予定通り12月に完成できるかどうか危ぶまれている。建設工事に従事する労働者らが今月結成した労働組合の幹部は「週7日、24時間体制で作業に当たっている」と話す。

 またインタファクス（Interfax）通信は、工期に間に合わせるため、スペツストロイが追加予算として200億ルーブル（約500億円）を要求したと伝えている。(c)AFP/Thibault MARCHAND