【6月13日 AFP】キューバにあるグアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地の収容施設で拘束されていたフランス人男性が、カナダのモントリオール(Montreal)で開催された欧米人青年の過激思想対策に関する会議に出席するため、フランスのリヨン(Lyon)からカナダの航空会社エア・トランザット(Air Transat)の航空機に搭乗しようとしたところ、米国の領空内を通過するという理由で渡航を拒否された。同氏本人が12日、公共放送ラジオ・カナダ(Radio-Canada)で明らかにした。

 ムラド・ベンシェラリ(Mourad Benchellali )氏(33)氏は、自分の名前が米国の搭乗拒否リストに載っていることにショックを受けたと話し、「私は過激思想の予防対策や、自分の経験についてをカナダで語るはずだった。私のゴールは、若者を悪循環に陥らないよう忠告することにある」と話した。

 会議の主催者側は、ベンシェラリ氏の搭乗拒否について「テロ対策において不公平で効果がなく、一貫性のないやり方だ」と非難した。

 米国の航空機追跡ウェブサイト、フライトアウェア(FlightAware)によると、リヨン発モントリオール行きの航空機は米国の領空を通過しないが、復路は米メーン州(Maine)上空を通過することを示している。

 ベンシェラリ氏は、アフガニスタンで国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に訓練を受けていたとして米軍に拘束された後、グアンタナモの施設に2年間収容され、04年に釈放された。

 ベンシェラリ氏は、イスラム過激派のアルジェリア系フランス人家族の末っ子。同氏はグアンタナモから釈放後、フランスで裁判を受け、米軍との戦闘に参加したことはなく、攻撃を計画したこともないと主張した。最近のAFPの取材に対し、「私はその頃、まだ若くナイーブで、旅をしてみたかった。アフガニスタンには悪意を持って渡航したわけではない」と語っていた。

 同氏は2007年にフランス当局から釈放されて以降、自身の体験を綴った本を出版し、フランスやスイス、ベルギーなどで過激思想の危険について講演を行っている。(c)AFP