【6月10日 AFP】10代の頃に摘出・冷凍保存した卵巣組織を成人後に体内に戻した女性が子どもを出産した。思春期を迎える前に卵巣を摘出したケースでは世界初という。医師らが9日、明らかにした。

 この女性は14歳になる前に急性貧血と診断された。治療による卵巣への損傷が懸念されたため、右側の卵巣組織を摘出し、断片を凍結保存した。将来、妊娠・出産を希望した場合に望みをつなげるための措置だ。

 そして、組織摘出から10年後、ベルギーの外科医が卵巣の断片を解凍し、女性の体内に戻した。女性は昨年11月に子どもを出産している。

 英学術誌「ヒューマン・リプロダクション(Human Reproduction)」に掲載された報告によると、成人女性から摘出し、戻された卵巣組織による出産例はこれまでにも複数あるが、思春期を迎える前に摘出されたケースでの成功例はこれが初めてだという。

「これがこの分野で重要かつ画期的なのは、今後この処置で一番恩恵を受ける患者は子どもたちだからだ」と移植手術を行った医療チームを率いるベルギー・ブリュッセル自由大学(Brussels Free University)エラスムス病院(Erasmus Hospital)のイサベル・デミーステア(Isabelle Demeestere)氏は語った。

 移植後2年以上が経過して、女性は27歳で自然妊娠した。昨年11月に誕生したのは体重3.1キロの男児だった。

 医師らによると、女性の卵巣は引き続き正常に機能しており、残りの組織も保存されたままだという。(c)AFP