102歳ドイツ女性がついに博士号、ナチス迫害で最終試験遅れる
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【6月10日 AFP】ドイツで9日、102歳の女性が大学で博士号を取得した。第2次世界大戦(World War II)中にナチス・ドイツ(Nazi)が施行した人種政策のために最終試験を受けられず、80年近くたってからの受験だった。
小児科医のインゲボルク・シルム・ラポポート(Ingeborg Syllm-Rapoport)さんはハンブルク大学エッペンドルフ大学病院(UKE University Medical Center)で博士号を授与された。ラポポートさんはジフテリアに関する博士論文を1938年ごろには完成させていた。
同大学病院によれば、ラポポートさんはハンブルク(Hamburg)で医学を学び、1937~1938年までは市内にあるユダヤ系の病院に勤務しながら博士論文を執筆したという。
しかしそのころまでにアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)政権が人種政策を推し進めており、ユダヤ人家系に生まれたラポポートさんは口頭試験を受けられず、博士号を取得できなかった。ラポポートさんの母親のマリア・シルム(Maria Syllm)さんは、ユダヤ人のピアニストだった。
ラポポートさんによれば、1938年に担当教授は、法律で認められてさえいれば博士論文を合格としていたと記した証明書を書いてくれたという。
また、今回やっと受けられることになった試験に備えるために、友人たちはこの80年間に進歩したジフテリアの知識をグーグル(Google)で検索して協力してくれたという。
ハンブルク大学は、ラポポートさんは5月に口頭試験を受けて見事合格したと明らかにし、おそらく世界最高齢での博士号取得者ではないかとコメントしている。
ハンブルク大学エッペンドルフ大学病院の院長で代表を務めるブクハント・グーケ(Burkhard Goeke)さんは声明の中で、「正義の一部」を取り戻すことができたことに自分たちも喜んでいると述べた。「起きてしまった不正をなかったことにすることはできないが、過去に対する洞察は私たちの未来に対する洞察を養ってくれる」とグーケさんはコメントしている。(c)AFP