【6月4日 AFP】ギャンブルの聖地として知られる中国の特別行政区マカオ(Macau)が、富裕層をターゲットとしたカジノ特化型の観光産業から、ファミリー向け複合リゾート施設の開発へと方向転換しようとしている。背景には、中国政府が進める反腐敗運動や中国経済の鈍化を受けてカジノ収益が急激に落ち込んでいる現状がある。

 とはいえ、エンターテインメント中心の巨大リゾート施設をマカオ観光の目玉にして新規の訪問客を呼び込もうという作戦の先行きは、順風満帆とは言い難い。

 マカオの老朽化したインフラは今でさえ、観光客の多さに悲鳴を上げている。専門家や地元住民からは、大金を落とすカジノ客の減少による損失を補えるほど多数の観光客をさばききれるのか、疑問の声が上がる。

 香港の公立大学、香港教育学院(Hong Kong Institute of Education)のソニー・ロー(Sonny Lo)教授は、マカオ再生計画が成功するか否かは、大衆向け賭博と賭博以外のエンターテインメントの両方を消費者がどの程度求めるかにかかっていると指摘。それでも、この10年間の繁栄には及ばないとの見方を示した。「一般の消費者では、VIPルームに投じられた巨額の金を補てんすることはできない」

 マカオは2001年にカジノ経営権を外資に開放した後、急激な成長を遂げ、米ラスベガス(Las Vegas)を抜いて世界最大のカジノ都市となった。2014年のカジノ収益は、ラスベガスの7倍超に達した。

 だが、今年4月のカジノ収益は前年同月比で39%減少し、11か月連続の減収となった。習近平(Xi Jinping)中国国家主席の推進する反腐敗運動が、マカオで金を使ったりマネーロンダリング(資金洗浄)を行ったりする官僚を厳しく取り締まっているためだ。

 マカオは今、ラスベガスの先例に倣い、カジノ特化型観光地からより幅広いアトラクションを揃えたリゾート地への変革を迫られている。各カジノホテルが構想する新リゾート施設では、高級レストランやショッピングモール、遊園地やショーなど、ギャンブルにとどまらない多彩な娯楽を提供する。

 カジノ運営大手メルコ・クラウン・エンターテインメント(Melco Crown Entertainment)が年内に開業予定の複合施設「スタジオ・シティ(Studio City)」は、アジア随一の高さを誇る観覧車が売りだ。この春開業したばかりのギャラクシー・エンターテインメント(Galaxy Entertainment)のリゾート「ギャラクシー・マカオ・フェーズ2(Galaxy Macau Phase 2)」の屋上には、「波のプール」が設置された。来年には、米ラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands)の子会社サンズ・チャイナ(Sands China)が、仏パリ(Paris)をテーマにエッフェル塔(Eiffel Tower)のレプリカを備えた複合リゾート施設をオープンする予定だ。