冥王星の衛星に不規則な自転、ハッブル望遠鏡の観測で判明
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【6月4日 AFP】(画像追加)冥王星の衛星の一部は、ラグビーボールのような形状をしており、公転軌道内で不規則な自転運動をしているとの研究結果が3日、発表された。地球から遠く離れた準惑星系に関する最新の研究結果となる。
今回の研究によると、これまでに知られている冥王星の衛星5個の中で2番目と3番目に大きいヒドラ(Hydra)とニクス(Nix)は、球を引き伸ばしたような形をしており、地球の衛星の月とは大きく異なる挙動を示すことが、ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)を用いた観測で分かったという。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文の共同執筆者で、米SETI研究所(SETI Institute)のマーク・ショーウォルター(Mark Showalter)氏は、AFPの取材に「これらの衛星は、不規則に回転している。北極が南極になるようにひっくり返る時もある。非常に特異な振る舞いだ」と語る。
2つの衛星は、公転軌道内の位置はそのままで、宇宙空間での「向き」を変化させており、「ランダムな方向に回っている状態」だと同氏は説明する。
冥王星は、最大の衛星カロン(Charon)とともに太陽系内で唯一の「二重惑星」を形成しているとされ、この二重惑星の周りを小型の衛星4個が公転している。
冥王星とカロンが生成する重力場が不均衡で常に変化していることが、小型衛星のランダムな自転を引き起こしていると、米メリーランド大学(University of Maryland)の声明は説明。そして、衛星が楕円(だえん)形であることで、この作用はさらに大きくなっているとした。
論文の第2執筆者で、メリーランド大のダグラス・ハミルトン(Douglas Hamilton)氏は「地球の月や大半の他の衛星は、まるで『良い子』のように用心深く、『親』の惑星には常に決まった一面しか見せない」と話し、「冥王星の衛星はむしろ、規則に従うことを拒む強情な若者に近いことが、今回の研究で分かった」と続けた。
だが、自転は不規則であるにもかかわらず、ヒドラ、ニクス、ステュクス(Styx)の公転軌道は「正確な規則的パターン」に従っていると声明は指摘している。
また、もう一つの衛星ケルベロス(Kerberos)は炭のように暗い色をしている一方、それ以外の衛星は白い砂のように明るい色をしていることが、今回の研究で判明した。「冥王星の衛星は全て、同じ衝突によって同時に形成されたと考えられているため、皆そっくりに見えるだろうと予想されていた。だがそうではないことが分かった」とショーウォルター氏は説明する。
衛星系がどのようにして現在の姿に至ったかは科学的に解明されていないが、原始冥王星に巨大な天体が衝突して残骸の雲ができ、そこから冥王星の衛星が形成されたとする説が有力となっている。
ショーウォルター氏とハミルトン氏の研究チームの成果は、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された冥王星系の全画像を分析した結果に基づくものだ。
太陽系や他の惑星系で、惑星と衛星が形成され数十億年にわたり安定した公転軌道を保つ仕組みを解明するために、今回の冥王星系の研究が役立つ可能性があると天文学者らは期待を寄せる。
ハミルトン氏は「カオスは、二重星系に共通する特徴である可能性があることが分かってきている」と指摘し、そして「この特徴は、二重星を公転する惑星上の生命にも影響をもたらすかもしれない」と述べる。
米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」は7月、冥王星系を接近通過し、さらに詳細な観測を行う予定だ。(c)AFP