【6月2日 AFP】米国立がん研究所(National Cancer InstituteNCI)は1日、シカゴ(Chicago)で開かれた米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical OncologyASCO)の会合で、がん腫瘍の遺伝形質に基づく標的療法の研究を目的とする史上最大規模の臨床試験を開始すると発表した。この研究分野は、精密医療として知られている。

 NCI-MATCH(NCIによる治療選択のための分子分析、Molecular Analysis for Therapy Choice)と命名された今回の臨床試験に参加する患者約1000人の登録は、7月に開始される予定だ。

 臨床試験への参加資格を持つ患者としては、標準的治療を1種類以上施したにもかかわらず進行した固形腫瘍やリンパ腫を抱える18歳以上の大人の患者が挙げられている。標準的な治療法が存在しない腫瘍を抱える患者も、被験者となる可能性がある。

 標的療法のアプローチは、乳房、大腸、肺といった腫瘍の部位に基づいてがんを治療するのではなく、異なる種類のがんにみられる分子の異常を特定することで構成されている。これは、各個人に対する最善の治療法を決定するためだ。例えば、異なる腫瘍間に類似の遺伝子変異が存在する場合、乳がんの治療に通常用いられる薬剤が、肺がん患者の最善の治療法になるかもしれない。

 患者の腫瘍にみられる分子異常を狙い撃ちする治療法を適用するために、臨床試験に参加した各患者に、それぞれ特定の遺伝子変異を標的とする20種類以上の臨床試験薬とその組み合わせを参照するという。

 精密医療プロジェクトの概要は1月、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の一般教書演説で説明された。現在知られている約200種の腫瘍に対して、治療の有効性の向上と臨床試験期間の短縮が、精密医療によって実現する日が来ることが期待されている。(c)AFP