【5月29日 AFP】1973年に死去したノーベル文学賞受賞者で詩人パブロ・ネルーダ(Pablo Neruda)氏の遺族が28日、同氏の遺体に重度の細菌感染の痕跡が残されていたことを専門家らが確認したと明らかにした。調査結果を受け、同氏がアウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)独裁政権によって毒殺されたとの疑いが強まっているという。

 ネルーダ氏は、前立腺がんが原因で死去したとされているが、治療を受けていた首都サンティアゴ(Santiago)の病院で、胸部に「謎の注射」を打たれたと元運転手が主張していることから、その死因には注目が集まっていた。

 ネルーダ氏は当時、ピノチェト政権に対抗する目的でメキシコへと向かう計画を練っていたとされるが、この注射を打たれた数時間後に死亡している。69歳だった。

 死因については、がんが進行したためと説明されたが、司法当局は2013年、ネルーダ氏が所属していたチリ共産党(Chilean Communist Party)からの要請を受け、遺体の掘り起こしと分析を決定。そして同年、法医学の専門家によってネルーダ氏の死に関係する化学物質は検出されなかったと発表していた。

 しかし、司法当局によると、スペイン・ムルシア大学の法医学専門チームによる新たな調査の結果、ネルーダ氏の遺体から「不審な」黄色ブドウ球菌が検出されたという。当局は現在、その他の調査結果が出るのを待っているとしている。

 1971年にノーベル文学首を受賞したネルーダ氏は、当時のサルバドル・アジェンデ(Salvador Allende)大統領の社会主義政権に対するアウグスト・ピノチェト陸軍司令官(後に大統領に就任)の軍事クーデターから12日後に死去した。(c)AFP