【5月15日 AFP】多大な音楽的影響と、多くの子を残して他界したブルース界の巨匠B・B・キング(B.B. King)さんはしばしば、自分が本当に愛しているのはルシール(Lucille)だと語っていた──この「女性」の正体は、キングさんが愛用したギターだ。

 史上最高のギタリストの一人と評されることも多いキングさんは14日夜、米ラスベガス(Las Vegas)で、89歳で死去した。多忙なツアー生活に終止符を打ってから1年足らずのことだった。

 ツアー中、キングさんは常にギブソン(Gibson)製「ES-355」ギターを持ち歩いた。観客に対しては、自分の「女」だとジョークを飛ばすこともしばしばだった。

 ギブソンが特別に製造したルシールは、サウンドホールのないセミホロウボディーとチューニングの精度を高めるファインチューナー付きのテールピースを特徴としている。

 キングさんによると、名前の由来はアーカンソー(Arkansas)州を訪れた際に2人の男性が起こした「ルシール」という名の女性をめぐる争いだった。この争いがきっかけで建物内では火災が発生。キングさんは炎上する建物の中に突入し、愛用するギターを命からがら救いだした。

 キングさんはいつも、ルシールをまるで人間であるかのように語り、ミシシッピ(Mississippi)州の綿花農場での貧しい少年時代から抜け出すのを助けてくれたと評していた。また、ギターに関する曲も作り、「僕はルシールに首ったけ。ルシールは僕を農場から連れ出してくれた。僕に名声をもたらした」などと歌った。

 ギブソンはキングさんとの長いパートナーシップの中、さまざまなルシールのモデルを製造している。(c)AFP