【5月15日 AFP】北朝鮮の玄永哲(ヒョン・ヨンチョル、Hyon Yong-Chol)人民武力部長(国防相)が反逆罪に問われ処刑されたとする報道の真偽について、疑念が浮上している。発端となった報告を行った韓国の情報機関・国家情報院(NIS)は、玄氏が処刑された事実は確認できていないことを明らかにした。

 NISは13日、韓国国会の委員会で非公開の状況報告を行い、玄氏が粛清されたと説明。さらに、4月30日に対空砲で処刑された可能性を示す情報があると伝えた。メディアは玄氏処刑をめぐる残忍な詳細で一色となったが、NIS報道官は14日、AFPの取材に対し、玄氏は粛清されたが処刑については「確認されていない」と強調した。

 情報に混乱が生じたのには、NISの議会報告の行われ方と報道のされ方に一因があった。報告は密室で行われ、その後、選ばれた一部の議員がその情報を韓国メディアに伝えた。その際、元のNISの報告と各メディアの報道に食い違いが生じたとみられる。

 NISでは報告会見の内容がメディアに伝わることを承知しているため、NISがここで公表する情報は、正確性の慎重な検討を経たものであるとみなされている。しかし、13日の報告に出席した議員の一部や専門家は、NISの結論に疑問を呈している。

 その理由の一つは、玄氏の粛清があったとされる後も、北朝鮮の国営テレビが玄氏の映像を流し続けていることだ。北朝鮮高官が粛清された際には、北朝鮮の国営メディアは通常、その高官に関する過去の報道を完全に削除し、すべての映像を封印する。そうした高官の運命は、左遷から地方部への追放、投獄、処刑までさまざまだが、その消息を聞くことは二度とないのが普通だ。

 しかし、国営テレビは直近で12日にも、玄氏が金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記に同行する古いテレビ映像を放映している。韓国の野党議員、申慶敏(Shin Kyoung-Min)氏は同国のラジオ局に「玄氏の粛清が真実で、さらに処刑もされていれば、テレビ局がこうした間違いを犯すはずはない」と語っている。(c)AFP/Jung Ha-Won