【5月15日 AFP】日本の安倍内閣は14日の臨時閣議で、自衛隊の役割や活動範囲を強化・拡大する安全保障法制関連法案を閣議決定した。混乱の度合いを深めるアジア太平洋地域において、平和主義を掲げてきた日本が自国の位置付けを再定義する内容となっている。

 15日に国会に提出された法案は、自衛隊の権限拡大を目指す安倍内閣が昨年から法制化に取り組んできたもので、安全保障関連10法の改定案を一括した「平和安全法制整備法案」と新法の「国際平和支援法案」から構成されている。日本の「平和および安全に重要な影響を与える事態」に際して、日本と密接な関係にある他国を後方支援できるよう自衛隊の活動に関する地理的制限を撤廃しているほか、現在は憲法9条の厳格な解釈によって禁じられている同盟国を防衛するための戦闘、いわゆる「集団的自衛権」を認めようとしている。

 安倍晋三(Shinzo Abe)首相は14日、中継された記者会見で「もはや一国のみで、どの国も自国の安全を守ることはできない時代だ。この2年、アルジェリア、シリア、チュニジアで日本人がテロの犠牲となった。北朝鮮の数百発もの弾道ミサイルは、日本の大半を射程に入れている」と説明。「自衛隊機の緊急発進、いわゆるスクランブルの回数は、10年前と比べて実に7倍に増えた。これが現実だ。私たちは、この厳しい現実から目を背けることはできない」と述べた。

 第2次世界大戦での敗戦後、米国の占領統治下で制定された日本国憲法は、施行以来1度も改定されていない。草案を作成した米国は長年、日米安全保障条約の中でより積極的な役割を果たすよう日本に求めてきた。

■反対の声

 しかし、日本の世論は平和主義への貢献を減らすと考えられることには懐疑的で、自衛隊は狭い定義での日本の自衛にのみ運用すべきだとの意見が根強い。今回の安保法制をめぐる動きを批判する人々は、平和主義の理念が侵食されれば日本は米国が中東で繰り広げる軍事的冒険に巻き込まれると警鐘を鳴らす。

 一方、安倍首相は14日の記者会見でこれを否定。「海外派兵が一般に許されないという従来からの原則も変わらない。自衛隊がかつての湾岸戦争(Gulf War)やイラク戦争(Iraq War)での戦闘に参加するようなことは、今後とも決してない。そのことも明確にしておきたい」「これからも私たち日本人の誰一人として戦争など望んでいない」と語った。

 この日、都内の首相官邸前には、法改定を非難する横断幕を掲げた数百人が集まった。66歳の参加者は、法案は最終的に米国の戦争への参加を認めるもので、明らかに憲法違反だと批判した。

 法案では「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立がおびやかされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」には、日本は同盟国を防衛できるとしている。

 日本では昨年、防衛産業強化の一環として、兵器の輸出を禁じた武器輸出三原則が緩和された。これを受け、国内初となる防衛機器の国際展示会が今回の閣議決定と時を同じくして開催されている。(c)AFP/Kyoko HASEGAWA