庭の野鳥給餌、恩恵受けるのは侵略的な外来種 NZ研究
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【5月5日 AFP】住宅の庭に設置した鳥の餌箱は、イエスズメやハトなどのより侵略的な外来種を呼び寄せる一方で、昆虫や花蜜を常食とする在来種を遠ざけ、自然界の均衡に影響を及ぼす可能性があるとの実験結果が4日、発表された。
査読学術誌の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)の電子版に掲載された論文によると、今回の実験は、植物の種やパンくずを入れた餌箱を庭に設置することで、どのような種類の鳥にどの程度の影響を及ぼすかを特定し、また環境における均衡がどのように変化するのかを調査するために行われたという。
論文主執筆者で、ニュージーランド・オークランド大学(University of Auckland)生物多様性と生物安全保障センター(Centre for Biodiversity and Biosecurity)の研究者、ジョジー・ガルブレイス(Josie Galbraith)氏は「鳥の餌やりは、全世界的に非常に大きな規模で行われている。これは本質的に世界的規模の実験だ」と語る。野鳥への給餌は、米国や欧州、オーストラリアなどで広く行われている。
研究チームは1年半にわたり、ニュージーランド北部オークランド(Auckland)にある住宅地の庭23か所で実験・調査を行った。このうち11か所の庭には鳥の餌箱を設置し、パンくずや種を毎日補充した。それ以外の12か所には餌箱を置かなかった。
研究チームはこれらの庭で野鳥の観測調査を実施し、延べ597回の調査で記録された鳥の数は33種、1万8000羽以上に及んだ。
その結果、庭の餌箱はイエスズメやカノコバト、クロウタドリやインドハッカなど、非在来種の雑食性の鳥に恩恵となる傾向があることを研究チームは発見した。
「給餌実験期間中、餌箱を置いた庭には、餌箱のない庭の2.4倍の数のイエスズメと、3.6倍の数のカノコバトが飛来した。イエスズメとカノコバトはどちらも移入種だ」と論文は述べている。
新たに餌箱を設置した住宅では、餌箱に群がる鳥の数の「劇的な」増加がみられ、種やパンくずが2時間足らずでなくなることも多かったと報告された。
一方で、餌箱を設置した庭では、鳥の種の多様性が急激に低下した。昆虫を主食とする在来種のニュージーランドセンニョムシクイは、これらの場所で目撃される頻度が減少した。
この影響は一時的なもので、餌台を撤去すれば回復可能という。
調査結果を受け、研究チームは、特に果物、蜜を出す花、昆虫などに自然に集まる野鳥を受け入れるための、より幅広いアプローチを実施するよう野鳥愛好家らに呼び掛けている。
ガルブレイス氏は、AFPの取材に「餌やりをやめるべきと示唆しているのではない。給餌は都市に暮らす人々にとって実際に非常に重要な意味を持つ可能性がある。人々に自然との結びつきをもたらし、これ自体には多くの利点があるからだ」と語った。また「問題にすべき点は、多種多様な種類の野鳥をどのようにしてわれわれの暮らす都市地域に呼び寄せることができるかということだ。誰もが実行できることは、適切な樹木を植えたり、水飲み場を提供したりして、野鳥に優しい庭を造ることだ」と続けた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN