安倍首相、米議会で歴史的演説 大戦の犠牲者に「とこしえの哀悼」
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【4月30日 AFP】訪米中の安倍晋三(Shinzo Abe)首相は29日、日本の首相として初めて米上下両院合同会議で演説を行った。第2次世界大戦(World War II)の首相の見解が物議を醸す中、演説では日米両国の関係強化への期待感を表明した。
英語で演説した安倍首相は、真珠湾(Pearl Harbor)や硫黄島などでの激戦の残り火の中から両国が築きあげた強固な絆を強調すると同時に、日本の過去の行いについて心からの謝意を表明した。
「日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。とこしえの、哀悼をささげます」と話すと、米議員からは大きな拍手が湧き起こった。
連邦議会議事堂に到着する直前、安倍首相は推定40万人の米国人の命を奪った大戦の慰霊碑を訪問し、花輪をささげた。
演説で安倍首相は「メモリアルに刻まれた戦場の名が心をよぎり、私は米国の若者の、失われた夢、未来を思いました」「歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙とうをささげました」と述べた。
だが、安倍首相の歴史的演説に暗い影を投げかける恐れがあるのは、大戦中のアジアでの日本の行為だ。
米議会では、旧日本軍の「性奴隷」にされた推定20万人のアジア人女性のうちの一人である韓国人の李容洙(Lee Yong-Soo)さん(87)も安倍首相の演説を傍聴した。
李さんの出席は、米民主党のマイク・ホンダ(Mike Honda)議員の招待を受けたもの。ホンダ議員は、慰安婦問題で日本政府または旧日本軍が果たした役割を安倍首相が軽視していると非難する多くの人々の一人だ。
安倍首相は、アジアの近隣諸国の人々に対する日本の行為について「痛切な反省」の念を表明したが、多くの人々が要求する全面的な謝罪には至らなかった。
安倍首相は演説で「戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない」と述べた。
これに対し一部の米議員は怒りを表明。ホンダ議員は安倍首相が「日本帝国陸軍が犯した組織的な残虐行為に対する自らの政権の責任を回避し続けている」のは「衝撃的であり恥ずべきことだ」と非難した。(c)AFP/Andrew BEATTY