【4月29日 AFP】インドネシア当局は29日、麻薬関連の事件で死刑を言い渡された外国人7人を含む8人の銃殺刑を執行した。現地メディアが報じた。これに先立ち国際社会は死刑の中止を強く求めていたが、その声は聞き入れられなかった。ただこの8人と同時の処刑が見込まれていたフィリピン人の女死刑囚だけは、直前になって執行がいったん中止された。

 この外国人7人とインドネシア人1人の死刑は同日午前0時(日本時間同2時)すぎ、同国中部ヌサカンバンガン(Nusakambangan)島の厳重に警備された刑務所で執行された。民放メトロTV(MetroTV)と英字紙ジャカルタ・ポスト(Jakarta Post)によると、外国人死刑囚のうち2人はオーストラリア人、1人はブラジル人、4人がアフリカ出身だった。

 フィリピン人のメアリー・ジェーン・ベローソ(Mary Jane Veloso)死刑囚は死刑の執行が中止された。ベローソ死刑囚をだましてインドネシアへ麻薬を密輸させたとする人物がフィリピン警察に出頭したことを受けての措置とされる。

 フィリピン政府はベローソ死刑囚の死刑が執行されなかったことを歓迎した。同死刑囚についてはフィリピンのボクシングのスター選手マニー・パッキャオ(Manny Pacquiao)氏らをはじめ多くの人から恩赦を求める声が上がっていた。

 一方オーストラリアでは、自国出身の死刑囚2人が処刑されたことに衝撃と怒りが広がった。2人はヘロイン密輸組織、通称「バリ・ナイン(Bali Nine)」の幹部で、この2人の存在はオーストラリアとインドネシア両政府の関係悪化を招いていた。

 オーストラリアのスティーブン・シオボ(Steven Ciobo)外務政務次官はツイッター(Twitter)に、「死刑ほど国家権力の乱用と思考の退行を明示するものはない」と投稿した。

 インドネシアで死刑が執行される際、死刑囚らは必ず午前0時すぎに空き地に連行され、柱に結び付けられた後にひざまずくか立ったまま、あるいは座るかの選択肢を与えられた後、12人からなる銃殺隊によって射殺される。

 インドネシアのジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領は、薬物のまん延でインドネシアが緊急事態に直面していると訴え、麻薬密輸犯らに対する死刑を支持する姿勢を示し、国連(UN)の潘基文(バン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長をはじめとする国際社会からの死刑中止要請にも耳を傾けなかった。(c)AFP/Nick Perry