【4月23日 AFP】リビア沖の地中海(Mediterranean Sea)で19日に発生し、800人が死亡したとみられる難民船転覆事故で、事故発生当時の凄惨な状況が、生存者の証言から明らかになってきた。

 全長20メートルの船が、遭難信号を受けて到着したポルトガルの貨物船と衝突した際、乗船者の大半は、船倉やミドルデッキに閉じ込められた状態だった。

 乗船者のうち、救出されたのはわずか28人。これまでに24人の遺体が収容された。数少ない生存者らの話によれば、船には当時、1~3階までに数百人が乗せられていた。

 ある10代のバングラデシュ人生存者はイタリアの日刊紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)に対し、「一番安い料金を払った客は、船の底にある船倉に閉じ込められていた」と話している。

 暗闇で起きた衝突の恐怖で、「誰もが叫び、押し合い、殴り合い、肘で押し合っていた」ほか、閉じ込められた人々が「助けて」と叫ぶ声が聞こえていたという。

 また、別の17歳のバングラデシュ人生存者は英紙デーリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)に対し、難民船と貨物船が3回衝突したと証言。「皆がパニックに陥り、甲板の反対側に殺到したため、船がひっくり返った」と語った。乗船者の大半はアフリカ出身で、泳げなかったといい、「自分が助かったのは泳げたからだ」という。

 一方、シチリア(Sicily)島カターニア(Catania)の検察当局は、チュニジア人のモハメド・アリ・マレク(Mohammed Ali Malek)船長(27)を不法監禁と故殺、密入国支援の罪で起訴する方針を示している。

 船長は船を操縦しながら飲酒していたほか、大麻を吸っていたとみられている。船長に加え、シリア人の船員(25)も当局に身柄を拘束されている。(c)AFP/Angus MACKINNON with Fanny CARRIER in Catania