【AFP記者コラム】「イスラム国」から奪還した町に戻るクルド人
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【4月27日 AFP】クルド人がトルコ国境に近いシリア北部の要衝の町アインアルアラブ(Ain al-Arab、クルド名:コバニ、Kobane)を、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」から奪還して2か月。クルド人の正月にあたる「ネウロズ(Newroz)」の前日に私はコバニに入り、故郷に戻ってくる人々を1週間にわたり撮影した。
前回、私がこの町に足を踏み入れたのは、ISが放逐された直後であり、まだ焼け焦げた車両や遺体がそこかしこにあった。今もわずか30キロ先では戦闘が続いているが、街中で戦闘部隊を見かけることはなく、コバニの中にいる限り、戦いの気配は感じられない。
2か月が経ち、普段通りの生活に戻り始めた兆しはいくつもあった。戦闘によって町の8割近くが破壊されたようだったが、人々があちこちで火をたき、いつ家を再建するか、まずは自分たちでがれきをどうすればいいかと話し合っていた。大半の人は使う金もないのだが、営業を再開した店もあった。
私の知る限り、これまでに5000人程度が町へ戻ってきている。だが、会った人の多くは、幸せとは程遠い状況に置かれている。家か親類、またはそのどちらもを失った人たちばかりだった。ある一家は家財をトラックに積み込み、元の家から別の家へ運んでいた。
全壊した家から、じゅうたんを運び出している男性もいた。家の修復が終わるまで、トルコ南部のスルチ(Suruc)などの難民キャンプにとどまっている家族も多いが、戻った人々は地元自治体から支援を受けられる。
訪れた学校は銃撃でほとんど破壊されていたが、5クラスで授業が行われていた。出席していた生徒は合わせて200人ほど。以前はアラビア語だけで行われていた授業が、今はクルド語で教えられていた。
通りでは子供たちが、何にでも楽しみを見つけて遊んでいた。この少年たちは電線でブランコのように遊んでいるが、電力が通っていないため危険はない。住民は発電機に頼っているが、それなしで耐えざるを得ない家もある。燃料はすでに不足し始めている。がれきの中に座っている写真の少女のように、暖をとるためにも、料理のための湯沸しや体を洗うためにも火をたく。
町東部の入り口で、最も激しい戦闘が起きた通りには「コバニへようこそ」と書いた看板の残がいがあった。
私がこの町を訪れたのはこれで4回目。昨年9月以来、ここで起きた悲劇の一部始終をトルコ側から見てきた。だから、新年のために最高の衣装を着たこの女性たちのポートレートを撮影できたことは、私にとって喜びだった。クルド人であることを示す黄色、緑、赤の服をまとった彼女たちによって、未来を楽観する象徴的なメッセージが伝わることを願う。(c)AFP/Yasin Akgul
この記事は、AFP通信へ寄稿しているトルコ人フリーランス・フォトグラファーのヤシン・アクギュルが書いたコラムを翻訳したものです。