【4月13日 AFP】ローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王は12日、100年前のオスマン帝国で多数のアルメニア人が殺害された事件を「ジェノサイド(集団虐殺)」と表現した。トルコ政府はこれに強く反発し、法王の認識は「史実から懸け離れている」と批判した。

 オスマン帝国によるアルメニア人の大量殺害から100年になるのに合わせ、バチカンのサンピエトロ大聖堂(Saint Peter's Basilica)で催された荘厳なミサでフランシスコ法王は、2001年に当時のローマ法王、故ヨハネ・パウロ2世(John Paul II)とアルメニア教会総主教が署名した声明を引用し、同事件は「20世紀最初のジェノサイドと広く認識されている」と述べた。

 第1次世界大戦(World War I)中に起きたこの事件については、多くの歴史家が20世紀最初のジェノサイドと表現しているが、トルコはこの見方を強く否定している。

 法王の発言に強く反発したトルコ政府は、詳しく話を聞くため駐バチカン・トルコ大使を召還すると発表。メブリュト・チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相はツイッター(Twitter)に「法王の発言は、法的事実からも史実からも懸け離れており、容認できない」「宗教当局は、根拠のない主張で怒りや憎しみをあおる場ではない」と投稿した。

 トルコ外務省はまた、駐トルコ・バチカン大使を呼んで説明を求めるとともに、当時のイスラム教徒やその他の宗教グループの苦しみからは目をそらした「一方的な見方」に加担したとして、法王を非難した。

 フランシスコ法王は自身の言葉で事件をジェノサイドと表現したわけではないが、ローマ法王がサンピエトロ大聖堂という場で、アルメニア関連でジェノサイドという文言を使ったのはこれが初めて。

 バチカン専門家のマルコ・トサッティ(Marco Tosatti)氏はAFPに対し、「あの事件がジェノサイドだったとはっきり繰り返したのは非常に勇気のある行為だ」と話し、「ヨハネ・パウロ2世を引き合いに出すことで教会の立場を強調し、本件に関する教会の認識を明示した」とみている。(c)AFP/Ella IDE