カナダ西部の氷河、2100年までに70%縮小の恐れ 研究
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【4月7日 AFP】カナダ西部にある氷河は今後85年でその大部分が融解する可能性が高い──このような研究論文が6日の英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載された。同山岳地域は世界的な景勝地としても知られる。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)のギャリー・クラーク(Garry Clarke)教授率いる研究チームが発表した論文によると、同国アルバータ(Alberta)州とブリティッシュコロンビア(British Columbia)州の氷河は2100年までに、2005年の水準と比較して面積で75%、体積で70%縮小することが予想されるという。研究対象となった3地域のうち2地域では、氷河の減少はさらに劇的となる恐れがあり、90%以上の縮小もあり得るとされた。
この結果について研究チームは、農業、林業、観光事業から生態系、水質に至るまでの多方面に打撃を与えるだろうと警告している。
クラーク教授は、AFPの取材に「氷河が消失すると、晩夏の暑い日照り続きの期間の影響を緩和するという、氷河が担っていた重要な役割が失われることになる。氷河は上流河川の流れを保持し、水温を低く保つことで、冷水性の水生生物種を維持している」と語った。
研究チームは、今世紀の地球温暖化に関する、広く知られた4のシナリオと氷河に覆われた地域3か所のデータおよび氷融解の動態に関するデータを組み合わせたコンピューターモデルを使用した。
シミュレーションの予測によると、温暖化の影響が最も小さい予測シナリオでも、氷河の大半はどうしても消失する運命にあるという。研究チームは「内陸部地域とロッキー(Rockies)山脈地域では、氷河はほとんど残らないが、海洋性氷河では、特にブリティッシュコロンビア北西部で減少した状態で残存する」と説明している。
今回の研究で用いられた「代表濃度経路(Representative Concentration Pathways、RCP)」と呼ばれる温暖化シナリオは、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)」が使用しているものだ。温暖化ガスの排出量が最も小さい「RCP2.6」シナリオでは、世界平均気温は今世紀末までに0.3~1.7度上昇する可能性が高い。炭酸ガス排出の現在の傾向に基づく、排出量最大の「RCP8.5」シナリオでは、世界平均気温の上昇幅はおよそ2.6~4.8度に達すると考えられている。
カナダ内陸部とロッキー山脈地域では、RCP2.6を除く全てのシナリオで、2005年の水準と比較して氷河の体積と面積が90%以上減少するとされたが、沿岸地域では氷河の抵抗力は他の2地域より強く、面積消失が75%、体積消失が70%(それぞれ10%の誤差範囲を含む)になるとされた。
クラーク教授の研究チームが研究対象とした3地域の総面積は2万6700平方キロで、ベルギーの国土面積にほぼ等しく、ヒマラヤ(Himalayas)山脈の氷河面積より広い。氷の体積は2980立方キロに及ぶ。
クラーク教授は、「氷河は、気象ではなく気候の影響を受ける。氷河の縮小は、気候変動が実際に起きており、深刻な結果を招くものであることを示唆している」と指摘。「良い行いは報われるが、先延ばしの期間が長くなるほど、悪い事態を招くことになる」と続けた。(c)AFP/Richard INGHAM