【4月5日 AFP】オーストリアのツルン(Tulln)で2006年に発掘された動物の全身骨格は、17世紀にオスマン帝国(Ottoman Empire)軍が使っていた去勢された雄のラクダのものだとする論文が1日、米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に発表された。

 オーストリアの地方部で飼育されている家畜のほとんどがウシであるため、当初この研究は徒労に終わるのではないかと懸念されていた。論文をまとめたウィーン獣医大学(University of Veterinary Medicine Vienna)のアルフレート・ガーリク(Alfred Galik)氏(動物考古学)は、「一部が掘り出された段階で、この骨は大型のウマかウシのものだろうと思われていた」と述べている。「しかし頸椎(けいつい)、下顎、中手骨を見たところ、すぐにラクダの骨だと分かった」

 研究チームは、このラクダは1683年の第2次ウィーン包囲(Siege of Vienna)の際、オスマン帝国軍が乗用・荷物の運搬用に使っていた可能性が高いことも突き止めた。ローマ時代のラクダの骨はこれまでにも何度かオーストリアやセルビア、ベルギーで発見されているが、ラクダの完全な骨格が中欧で見つかったのはこの例が初めて。

 ガーリク氏は、完全な骨格が見つかったことはラクダが解体されていなかったことを示しており、物々交換された可能性もあると指摘している。「当時のツルンの人たちにとって、このラクダは間違いなく珍しい動物だっただろう。餌として何を与えればいいのか、あるいはラクダを人間が食べることができるのか、恐らく知らなかったはずだ」

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