猿人の最新年代測定、「南ア人類発祥地」説を後押し
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【4月2日 AFP】南アフリカで発見された有名なヒト科動物の化石は、最新の年代測定の結果、これまで広く考えられていた年代より古いものであることが確認された。研究論文が1日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。自国が「人類発祥の地」であるとする南アの主張を後押しする結果だという。
「リトルフット」と命名されたこの骨格化石は、南アのスタークフォンテン洞窟(Sterkfontein Caves)群で、数百万年前に穴に落下したと考えられている小型の類人猿に似た動物のものだ。
だが、化石の年代については諸説あり、これまでに複数の研究チームによって、150万年前~400万年前という極めて大きな幅がある推定年代が提唱されてきた。
人類発祥の地は、主流派の説が示唆する東アフリカなのか、それともアフリカ南部なのか。あるいはその両方もしくは他の場所で同時に発生したのか。この問いに答えるために必要となるのは「年代」だ。
今回、米パデュー大学(Purdue University)のダリル・グレンジャー(Darryl Granger)氏率いる国際研究チームが発表したリトルフットの最新の年代測定結果は、この化石の推定年代を367万年前(誤差プラスマイナス16万年)としている。
この結果により、リトルフットは、エチオピアで発見されたヒト科動物の化石人骨「ルーシー(Lucy)」とほぼ同時代に存在していたことになる。ルーシーは、知られている中で最古の人類の祖先として最も有力視されている。
研究に参加した仏国立予防考古学研究所(INRAP)のローラン・ブリュッセル(Laurent Bruxelles)氏は、人類発祥地をめぐる議論において「アフリカ南部説が返り咲くことになる」と説明する。
新たな証拠は、最新技術を用いて化石が発見された堆積物の年代を測定して得られたという。宇宙線生成核種を用いたこの年代測定法では、宇宙空間から飛来する高速粒子が土や岩に衝突して生成される希少同位元素の濃度を調べて年代を特定する。
この手法を用いて2003年に行われた最初の試みでは、400万年という年代が示唆されたが、この結果は誤差範囲が非常に大きいものだった。この結果に著しく反したのは、ウランと鉛の同位体を調査した別の堆積物の測定で、220万年というはるかに新しい推定年代が得られていた。
だが昨年、ブリュッセル氏と研究チームは、周囲の堆積物が、洞窟内のリトルフットをかなり後の時代になってから包み込んだと断定。発掘場所で採取されたサンプルが化石自体よりはるかに新しい年代のものである理由をこれで説明できるようになった。この断定の下、リトルフットは「約300万年(前の時代のもの)である可能性が高い」と研究チームは推論した。
研究チームはこの研究成果を踏まえ、異なるサーチパラメーターとパデュー大にある強力な最新装置を用いて、2種類の宇宙線生成核種を測定する最新の年代測定を堆積物に対して実施した。
南ア・ウィトウォーターズランド大学(University of the Witwatersrand)は、骨格化石の10年間に及ぶ慎重な発掘作業の中で採取された11のサンプルのうち9点から得られた結果が「驚くほど」合致したことで、「堆積物の確たる年代が得られた」と述べている。
リトルフットとルーシーはどちらも、人類系統樹の中の「アウストラロピテクス(Australopithecus)属」と呼ばれる系統に属している。だが、それぞれの骨格は「非常に異なっており、(このことは)初期ヒト科動物の多様性に関する興味深い疑問を投げ掛けている」とグレンジャー氏は指摘している。(c)AFP/Pascale MOLLARD