【4月1日 AFP】トルコ・イスタンブール(Istanbul)の裁判所で3月31日、極左組織のメンバー2人が検察幹部1人を人質に取って立てこもる事件が発生した。治安部隊は最終的に人質救出作戦を実施したが、人質と犯人2人の計3人が死亡。6時間に及んだ緊張の事態は、流血の結末を迎えた。

 犯人らは、裁判所内のメフメト・セリム・キラズ(Mehmet Selim Kiraz)検察官の事務所で同検察官を人質に取って頭に銃を突きつけ、要求に応じなければ殺害すると脅迫していた。

 2人の要求は、2013年夏に発生した反政府デモの際、警察の関与で負傷し269日間の昏睡状態を経て昨年3月に死亡した少年の事件に関わるものだった。キラズ検察官は、同事件の捜査を率いていた。

 同国最大都市イスタンブールはこの日大規模な停電に見舞われ、すでに緊張が広がっていた。

 事件発生を受け、当局は犯人らとの交渉を開始。現場となった裁判所前で記者会見した同市警察署長によると、携帯電話での交渉のさなかに銃声が聞えたことを受け、人質救出作戦の実施が決まったという。

 同警察署長は、「テロリスト」2人が死亡したと発表した。一方、人質のキラズ氏は病院に搬送されたが、間もなく死亡した。医師らのテレビ向け声明によると、同氏は「到着した際、銃弾で頭と胸に傷を負っていた。呼吸も心拍もすでに停止していた」という。

■報道自粛要請

 事件については、近年同国で発生したさまざまな事件に関与している極左組織「革命人民解放党・戦線(DHKP-C)」が犯行声明を出した。

 DHKP-Cはまた、同組織の記章入りのスカーフで覆面した犯人の1人がキラズ氏の頭に銃を突きつけている写真を公開。また裁判所の5階にあった同氏の事務所の壁に、組織の旗やポスターを貼りだした。

 DHKP-Cはキラズ検察官に対し、少年の死亡事件に関わった警察官らの名前を挙げて「生放送で罪の告白」をさせるよう命令。同日午後までに応じなければ射殺すると脅迫していた。

 スーツにネクタイ姿のキラズ氏は、口を粘着テープで覆われ、犯人にあごを押さえつけられた状態でカメラを直視するよう強要されていた。

 同国の放送監視機関はこの事件に関する報道自粛を指示。各局は事件の生中継を中止した。(c)AFP/Dilay GUNDOGAN