シンガポール建国の父、リー・クアンユー元首相の国葬
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【3月29日 AFP】今月23日に91歳で死去した故リー・クアンユー(Lee Kuan Yew)シンガポール元首相の国葬が29日午後、シンガポール国立大学(National University of Singapore、NUS)で行われた。
ガラスケースで保護され、赤と白のシンガポール国旗に覆われたリー氏のひつぎは、ランドローバー(Land Rover)車に引かせた二輪の砲架に乗せられて議会からシンガポール国立大学に運ばれた。激しい雨にもかかわらず朝早くから約15キロの葬列のコースの沿道に集まっていた大勢の市民の間からリー氏の名前を呼ぶ声が上がった。
リー・クアンユー氏が1959年に英連邦自治州の初代首相として初めて宣誓した広場に葬列が差し掛かると、シンガポール空軍のアクロバットチーム「ブラックナイツ(Black Knights)」のF16戦闘機4機が上空を通過。うち1機が編隊から離脱して一人の偉人が去ったことを表現した。通常は現役の国家元首に対してのみ行われる21発の礼砲も、元首相のため例外的に発射された。
シンガポール国立大学で午後2時(日本時間同3時)から行われた国葬で、リー元首相の息子であるリー・シェンロン(Lee Hsien Loong)首相は、「長年にわたって私たちを導いてくれた光は消えてしまった」と述べた。
シンガポールは短期間マレーシアを構成する一つの州になった後、1965年8月9日にマレーシアから分離独立。リー・クアンユー元首相は4か月余り後に迫っていたシンガポール独立50周年をその目で見届けることなく旅立った。
国葬には、米国からビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領率いる代表団が参列。リー・クアンユー元首相の友人だったヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)元米国務長官も米代表団に名を連ねた。
日本の安倍晋三(Shinzo Abe)首相、韓国の朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領、オーストラリアのトニー・アボット(Tony Abbott)首相、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相、カンボジアのフン・セン(Hun Sen)首相、インドネシアのジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領など各国の首脳も参列した。
リー氏はシンガポールの経済と社会の発展に残した功績で国民の尊敬を集めている一方、人権団体からは野党勢力を冷遇し、報道や市民の自由を抑圧したなどとして批判されている。
1965年にマレーシアから分離独立した当時はわずか516ドル(現在の為替レートで約6万1500円)だったシンガポールの国民1人当たりの国内総生産(GDP)は2014年には5万6284ドル(約670万3400円)と世界最高になった。しかし経済発展は急速な高齢化をはじめとする新たな問題も生んでおり、シンガポールはいまや人口約550万人のうち40%近くを占める外国人に依存するようになっている。(c)AFP/Roberto COLOMA