【3月26日 AFP】インターネットで販売されている母乳は汚染されている可能性があり、赤ちゃんをリスクにさらすことになりえるとして、これを規制すべきとの論説が、25日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)に掲載された。

 母乳の栄養面での利点などから、赤ちゃんは母乳で育てるべきとする社会的風潮がますます高まりをみせる中、自分で母乳を与えることができない母親が、ネットを通じて母乳を購入するケースが増えている。

 欧米には、母乳が出ない母親に代わって別の女性が母乳を提供する母乳バンクがある。だが、ネット上では、規定で安全性などが管理された母乳バンクで提供されるものより安価で母乳が売買されている。論説によると安さの理由は、母乳を販売する側が費用節約のために母乳の提供者の検査や、母乳の保管、配送における衛生管理に手を抜いているからだという。

 さらに、「認可された母乳バンクの提供者と違い、ネット上での販売者は血清スクリーニングを実施する必要がない。つまりB型およびC型肝炎やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、ヒトT細胞白血病ウイルス、梅毒が検出されない可能性がある」とし、こうしたリスクを指摘した過去に発表された研究をいくつか取り上げている。

 その1つでは、ネットで購入した母乳を検査したところ、サンプルの約21%がサイトメガロウイルスと呼ばれるヘルペスウイルスに汚染されていたとしている。一方で母乳バンクのサンプルの汚染率は5%だったという。

 別の研究では、ネットで入手した母乳のサンプル101件のうち、92件でバクテリアの繁殖がみられたとし、低温殺菌処理が行われなかったり保管や配送の状態が悪かったりしたことが理由ではないかと述べている。

 さらに別の研究では、同じくネットで入手した母乳のサンプル102件のうち、到着時にパッケージが著しく破損していたり、すでに解凍した状態だったりするケースが25%に上り、バクテリアの急激な繁殖や汚染につながる可能性が指摘されている。

 論説では「他の研究でも、しばしば化学物質のビスフェノールAや違法薬物に汚染されていたり、牛乳や水を混ぜて水増しするといった改ざんがみられたりするケースがあった」とし、「幼児が摂取する前に検知することは簡単ではない」と述べている。

 英ロンドン大学クイーンメアリー校(Queen Mary University of London)の講師らによって執筆されたこの論説は、母乳の収集や配送に適切な規定を設け、初めて育児に臨む母親たちにアドバイスを提供する医療従事者たちへの研修を改善するよう求めている。(c)AFP