仏ボルドー、中国人投資家ワイナリー買収加速 低価格など新風も
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【3月28日 AFP】フランス南西部の高級ワイン産地、ボルドー(Bordeaux)のシャトー(醸造所)買収で中国人投資家がフランス人に肩を並べる勢いだ。ボルドーワインの世界的な名声と、ワインに対する中国の渇望が示されている。
現在、ボルドーにある7000か所のシャトーのうち、100か所超を中国人実業家が保有している。不動産業や宝石業、観光業などで築いた財産を分散投資する狙いだ。地元の大手不動産業者、マックスウェル・ストーリー・ベインズ(Maxwell-Storrie-Baynes)のカリン・マックスウェル(Karin Maxwell)さんは「最大の買い手は中国人とフランス人だ。それぞれ市場の3分の1程度を占める」と話した。
中国人投資家の多くは慎重に投資しているが、フランスのワイン業界団体は新たな資金の流入を歓迎している。ボルドーワイン委員会(CIVB)のベルナール・ファルジュ(Bernard Farges)会長は「心強い。ワイナリー買収によって、ボルドーワインのブランド力が高まるし、シャトーの不動産価値も上がる」と語った。
中国人によるボルドー・シャトーの所有率は今のところ、1.5%ほどだ。ただし、中国人が積極的に投資し始めたのはわずか6年前で、ここ3年間は毎年24か所を超えるシャトーをわれ先にと購入している。海運とテーマパークで財を成し、純資産8億ドル(約950億円)といわれる実業家・曲乃傑(Qu Naijie)氏は、ボルドーのシャトー30軒近くを所有する代表格といえる。
■輸出向け大量生産を前提とした変革
赤ワインの消費量が世界一の中国は、ボルドーの最大輸出市場で、2014年は6000万本が中国へ向かった。記録的な売り上げに伴い、ボルドーワイン業界の利益は13年まで拡大を続けたが、14年は大幅な落ち込みに転じた。減益には幾つかの要因が挙げられる。不安定な経済成長、中国当局によるぜいたく品規制、さらにオーストラリアや南アフリカ、チリ、米国など他の生産国との競争、海外のワイン購入者が市場にいっそう精通してきたことなどだ。
利益が縮小する中、中国人の新たなシャトー所有者は、これまで小規模・家族経営だったシャトーに、産業効率と規模の経済を導入しようとしている。中国人オーナーが取得しているシャトーの多くでは、グラン・クリュとして格付けされる高級ワインではなく、比較的低価格で知名度のあまりないワインを造っている。しかし、どのワインも正真正銘のボルドー産であることを示す政府基準であるボルドーAOCの格付けを得ている。乱戦状態の市場でのボルドー産の評価は高い。
中国人投資家たちが複数のシャトーを共同購入するケースもある。1か所当たり500万~1500万ユーロ(約6億5000万~19億5000万円)ほど。購入したシャトーで中国人オーナーたちは、伝統的な生産方法を廃止し、輸出向けの大量生産を前提とした技術を導入している。
地元の人々の中には、中国人がボルドーワインにもたらす変化に眉をひそめる人もいるかもしれない。だが、ボルドー・グラン・ヴァン連盟(Federation of Grands Vins of Bordeaux)のローラン・ガペンヌ(Laurent Gapenne)代表は「ボルドーは何世紀にもわたって、外国人投資家と共につくり上げられてきた。英国人に始まり、オランダ人、ベルギー人、日本人と続き、今は中国人だ」と述べ、「中国人がワイン生産に興味を持っていることを皆、非常に喜んでいる。ボルドーが他よりも優れた存在であり続けていることを証明している」と語った。(c)AFP/Laurent ABADIE