メキシコの「おねえレスラー」、ルチャリブレでの地位求め闘う
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【3月17日 AFP】彼らのリングネームや衣装は、メキシコ式プロレス「ルチャリブレ」の男気あふれる試合では珍しい。「ワイルドなディーバ」や「神聖なる星」といった名を持つこの男性レスラーたちは、ガーターベルトに網タイツ、口紅をつけてリングに立つ。
メキシコの首都メキシコ市(Mexico City)郊外のトゥルティトラン(Tultitlan)のガレージに設置された即席リングでの試合に備え、女性用ロッカールームでシングレットに着替える彼らは、互いを女性として呼び合う。他の男性レスラーたちは男性用ロッカーで着替えている。
「オカマパワー!」。リングアナウンサーが、日本語の俗語からとったチーム名を読み上げる。観衆からやじと歓声がわき上がる中、シースルーの派手なローブをまとった3人のレスラーが、のしのしとリングに上がる。「エクソティコ」(変わり者)たちの時間だ。
ルチャリブレに「エクソティコ」というカテゴリーが登場したのは、草分けレスラー「オラ・リラ(Ola Lila)」が登場した1970年代だが、今もエクソティコたちは真剣に認めてもらうためにリングの内外で闘っている。
「エストレヤ・ディビナ(Estrella Divina)」(神聖なる星)と名乗る20歳のレスラーは、女性になるためのホルモン療法を受けている。今の自信は昔、太平洋に面したアカプルコ(Acapulco)のリゾートでプロレスをしていた駆け出しの頃とはまったく違う。当時は自分の性自認を公にできず「恥の気持ちから」覆面をして戦っていたという。しかしひとたび、ありのままの自分を受け入れると「これが本当の自分ならば、どうして覆面の影に隠れてマッチョに振る舞わなければいけないのか」と思った。
試合が始まると「ディーバ・サルバヘ(Diva Salvaje)」(ワイルドなディーバ)さんはチョークホールドで、相手をマットに釘付けにし、立ち上がると観客をあおった。観客がエクソティコの定番の「技」を求め「キス!キス!キス!」とせがむと、対戦相手にキスではなく平手打ちを食らわした。こうしたユーモアと観客とのやり取りは、エクソティコたちが他のレスラーと一線を画す特徴の一部だ。
だが、たとえ観客を喜ばせることができようとも、エクソティコたちは無所属のレスラーとして闘わなければいけない。国内最大のルチャリブレ運営会社「AAA」が、エクソティコたちを低身長の人々や女性などと同じ前座試合用のレスラーとして扱っているためだ。
もう一つの大手企業「ルチャリブレ世界協議会(Lucha Libre World Council)」では、登録されているエクソティコは1人しかいなく、「マキシモ(Maximo)」という名の異性愛者だ。同性愛を公言しているディーバ・サルバヘさんは、異性愛者のレスラーたちがメーキャップをしてエクソティコとして働く一方で、「その多くが私たちを侮辱している」と嘆く。
2008年メキシコ・ライト級チャンピオンで、今年45歳のカサンドロ(Cassandro)さんは「時間とともに、エクソティコは受け入れられるようになった」と言う。カサンドロさんは同性愛者の権利擁護運動家として名を知られるようにもなった。しかし「レッテル貼りをなくすため、そしてわれわれの選手が同性愛者として見られるのではなく、エクソティコの選手とみなされるために、やることはたくさん残っている」と語る。(c)AFP/Carola SOLÉ