【3月16日 AFP】世界報道写真財団(World Press PhotoWPP)が主催する報道写真コンテストには今年、前例がないほど多くの「加工された写真」が持ち込まれ、写真報道(フォトジャーナリズム)における芸術性と不正の境界線の在りかをめぐる議論が再燃した。最終選考の一歩手前まで残った写真の20%が、過度の加工を施していたために失格となった。昨年の3倍だった。

 最終選考まで残ったカメラマンには、「RAW(ロー)画像」という未加工のファイルと最終版の両方の提出が求められた。RAW画像とは、カメラに記録されたままの写真であり、それを審査対象として出品された写真と比較することで、フォトショップなどの画像加工ソフトを使って、要素の追加や削除、トリミング、色・質感・トーンの修正など、どんな加工が施されたのかが分かる。

「ショックだった」と審査員を務めたAFPのフォトグラファー、パトリック・バズ(Patrick Baz)はいう。「世界報道写真財団は、撮影後の画像処理の許容範囲について厳格な基準を設けている。写真を改ざんすることは、その写真を見る人々に嘘をつき、自分自身にも嘘をついていることになる。自分の目で見たものではなく、このように見えたら良かったのにと願うものを見せているのだから」

「一部のフォトグラファーたちは、撮影後の画像処理段階で、芸術性を高めたいという誘惑に勝てないようだ」と、世界報道写真財団のマネジング・ディレクター、ラース・ボーイング(Lars Boering)氏は受賞作発表の声明で苦言を呈した。

 とりわけ、画像の不正加工による打撃が大きかったのはスポーツ写真部門で、この部門で失格せずに最終選考まで残ったのは2作品だけだった。「多くのスポーツフォトグラファーが、自分の仕事はジャーナリズムではないと思っているかのようだ」とバズは批判している。