【3月15日 AFP】欧米やアラブ諸国の願いとは裏腹に、内戦が5年目に突入したシリアで、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領は権力基盤を強化している。イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の台頭により、国際社会にとってアサド政権打倒は優先事項ではなくなった。

「アサド大統領の国際社会における地位は上がった。米国、欧州連合(EU)諸国、その他の国のいずれも、もはやアサド大統領の即時退陣を要求していない」と、ドイツ国際安全保障研究所(German Institute for International and Security AffairsSWP)のフォルカー・ペルテス(Volker Perthes)所長は指摘する。

 2011年3月の内戦開始以来、シリアでは21万人以上が死亡したが、その間、シリア政府軍は欧米の支援を受ける反体制派やイスラム過激派の勢力拡大阻止に成功してきた。人権団体からは今も、アサド政権がたる爆弾を投下し市民を無差別に殺傷していると非難する声が上がるが、既に反体制派さえもアサド大統領の退陣を和平交渉の条件としてはいない。

 ペルテス所長は言う。「欧米政府の声明からは、直接的にしろ間接的にしろ、アサド氏が大統領の座にとどまることを事実上黙認した上で、アサド大統領と穏健な反体制派による国家的連合を模索していることがうかがえる」