【3月10日 AFP】米国の思春期と青年期の若者の自殺率は過去10年間で、地方部の方が都市部に比べて2倍高くなっているとの調査結果が、9日の米国医師会(AMA)が発行する医学誌「JAMA小児科学(JAMA Pediatrics)」に発表された。

 米オハイオ州立大学(Ohio State University)ウェクスナー医療センター(Wexner Medical Center)などの研究チームは、1996~2010年の自殺率を分析。その結果、自殺は人口の少ない地域で増加しつつあり、都市部では以前より発生頻度が減少する傾向がみられるとして、地方部と都市部での差が広がりつつあることを発見した。

 今回の調査で用いられた、米国立衛生統計センター(National Center for Health StatisticsNCHS)の全米人口動態統計システム(National Vital Statistics System)のデータによると、同国では1996~2010年の間に10~24歳の若者6万6595人が自殺している。

 自殺は地方部の男性に最も多くみられ、10万人に20人近くの割合に達していた。都市部では、自殺率はこの半分の10万人に10.31人だった。

 若年の女性については、自殺率は男性に比べて低かったが、都市部では10万人に2.39人だったのに対し、地方部では10万人に4.4人で、地方部と都市部の間に同様の差がみられた。さらに若年の男性の自殺率は、若年の女性の4倍高いことが、今回の調査で判明した。

 自殺の半数以上は銃器によるもので、首つりによる自殺は全体の33.9%だった。服毒自殺は8%弱、高所からや車などへの投身自殺は7%だった。しかし、自殺の方法については、男性と女性の両方で、銃による自殺は以前より減少している一方、首つりによる自殺は増加傾向にあることが今回の調査で示唆された。

 今回の調査では、地方部での自殺率が高い理由に関する詳細な考察は行われていないが、ケアサービスの利用機会が要因の一つになっている可能性を研究チームは示唆している。

 ウェクスナー医療センターのジョン・カンポ(John Campo)氏は「地方部に住む子どもがうつ状態に陥った場合、最新のケアを受けられる機会は都市部に比べてはるかに少ない。また地方では、心理療法の受診も著しく困難だ」と指摘する。

 論文の執筆者らは、地方部に精神保健の相談窓口を新たに普及させる必要性を訴えている。

 論文の第一執筆者で、同センターのシンシア・フォンタネッラ(Cynthia Fontanella)臨床助教(精神医学・行動保健学)は「今回のような調査研究は、予防・対策の対象とすべき領域の特定に役立つ可能性がある。地方部を自殺の第一次予防の対象とする必要があることは明白だ」と話している。(c)AFP