【3月10日 AFP】AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)を引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が薬で抑制された後に身を潜めて隠れ家となる場所を、サルを用いた実験でのリアルタイム撮像技術により特定できたとする研究論文が、2日の米科学誌「ネイチャー・メソッズ(Nature Methods)」に掲載された。

 米エモリー大学(Emory University)のフランソワ・ビリンガー(Francois Villinger)氏率いる研究チームは、この成果がAIDS治療法の探求において大きな鍵となる可能性があるとして期待を寄せている。

 抗レトロウイルス薬により、血液中のHIV濃度は従来の手法では検出不可能なレベルに下げられる。だが、HIVは潜伏性が高く、潜伏中は特定の組織にある少数の細胞内に身を隠し、治療をやめると再発する。

 研究チームは今回発表した論文の中で、サルに感染するHIV類似ウイルスに感染したアカゲザルで、これらの「病原巣」を特定する画期的な方法を開発したと報告している。

 研究チームは、ウイルス表面タンパク質に付着する抗体を用いてHIVに「標識」を付けた。この抗体自体には、医療スキャン技術で広く使用されている銅の短寿命放射性同位体の標識(トレーサー)が付けられた。

 そして、ポジトロン断層撮影法(PET)スキャン装置を利用し、放射性のトレーサーの場所をリアルタイムで特定した。その結果、ウイルスが結腸、リンパ節、小腸、生殖管、鼻腔内の海綿状骨などに存在していたことが分かった。

 ビリンガー氏は声明で、「HIV感染細胞にある病原巣の壊滅を目指すには、その前にまずウイルスの隠れ家となる可能性のある組織部位を特定する必要がある」と指摘。「今回の成果により、動物モデルでこれをより効果的に行うことができるようになったと考えている。さらにはこの非侵襲的技術を、HIV感染根絶の研究や人体内のウイルス病原巣を標的にすることにつなげることが、今回開発した手法によって可能になるだろう」と続けた。

 最も有力と考えられているAIDS治療法の一つは、HIVを追い出して薬剤で殺す、いわゆる「キック・アンド・キル(Kick and Kill)」とされているが、これには隠れ家の特定が必須のステップとなる。(c)AFP