マレーシア機失踪1年、出口のない親族たちの苦悩
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【3月7日 AFP】乗客乗員239人を乗せたマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370 便が消息を絶ってから、8日でちょうど1年になる。真相解明は一向に進まず、残された親族たちは精神的、身体的苦痛の「ブラックホール」に閉じ込められたままだ。
MH370便に娘が搭乗していた中国の実業家、リ・フアさん(58)は昨年、脳卒中を患い、自殺も考えた。妻は心臓病で入院している。元々、健康マニアだったリさんは立て続けにたばこを吸いながら、「今はとにかく体調が悪い。自殺を考えたこともあった。なぜ思いとどまったか? 妻のため、それから真実を明らかにする闘いのために生きなければ」と話した。
マレーシアの医療機関を退職したA・アミルサムさんは、一人息子の行方が分からなくなってから、失神発作や不眠症、食欲減退に悩まされている。
一方、リ・ジウインさんはMH370便に乗っていた兄をなくした喪失感と、さらに年老いた母親にうそをついていることに重い責任を感じ、苦しんでいる。MH370便に兄は乗っていなかったと聞かされている母親は、今も息子が仕事で忙しくしていると信じている。
■一度も自国へ帰っていない家族も
2014年3月8日に起きたMH370便失踪の真相は依然、不可解なままで、航空機事故史上、最大の謎の一つに挙げられている。同便はマレーシアのクアラルンプール(Kuala Lumpur)を離陸し、中国・北京(Beijing)へ向かう途中、本来の飛行ルートを外れて、西へ針路を変更したあと、南へ向かい、そのまま消息を絶った。これまでインド洋南部で捜索が続けられているが、手掛かりは何も得られていない。
マレーシア当局は今年1月29日、乗客乗員は全員死亡したとみられると正式発表した。遺族が補償手続きを進められるようにするための発表だとしたが、親族の多くはこの宣言に憤りを感じるとともに、何の成果もないまま事件の真相究明作業が打ち切られるのではと不安を募らせている。政府とマレーシア航空は、何も隠蔽(いんぺい)していることはなく、オーストラリア当局が主導する捜索のために全力を尽くしていると主張する。
失踪機の乗客の3分の2が中国人だ。中国政府の一人っ子政策の影響で、事故の犠牲となったのが家族にとって唯一の子どもだった場合も多い。中国人の親族20人近くは2月から、当局に説明を求めるためにマレーシアに滞在しているが、当局からは面会を拒絶されているという。
親族たちの多くが不眠症や食欲減退、パニック発作のほか、さらに深刻な高血圧や心臓病などの病気を訴えている。航空機が消息を絶った日から一度も中国に戻っていないという人たちもいる。37歳の息子が行方不明のワン・ロンシュアンさん(60)は「帰れるはずがない。あの子を確認するまでは。とてもつらいけれども」と話した。(c)AFP/Dan Martin