【3月4日 AFP】訪米中のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は3日、米議会で演説し、現在米はじめ主要国がイランと協議を続けている核合意によってイスラエルという国家が消滅しかねないと主張した。この問題をめぐり、イスラエルと米政権が激しく衝突している。

 ネタニヤフ首相の熱のこもった演説にバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領はすぐさま反発し、同首相はイランの脅威を封じ込めに向けた自身の考えを何一つ提示していないとこき下ろした。

 ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官は現在、スイスでイラン側の代表者らとの協議に臨んでいる。交渉に加わっている主要国は合意の締結に向けた努力を続けており、実現すればイランの核開発を制限する見返りに同国に対する経済制裁が緩和されることになる。

 イスラエルは2週間後に議会選挙を控えており、ネタニヤフ首相率いる政党は接戦を強いられている。同首相に対しては一部から、個人的な政治的利益を優先して米国との密接な関係にひびを入れているという批判も上がっている。

 それでもネタニヤフ首相は、多くの議員が詰め掛けた上下両院の合同会議で、イランとの核合意を容赦なく非難。同首相は今月中にも合意がまとまるのではと危惧しており、「あの合意ではイランの核兵器開発を阻止できない」「イランは間違いなく核兵器を保有することになる、しかも多数だ」と訴えた。

 ネタニヤフ首相の演説に一部の議員は立ち上がって拍手し、米国のタカ派の外交関係者の多くも好意的な反応を示したが、米民主党からは、同首相は自らの政治的目的のために恐怖感を利用しようとしていると批判する声も上がった。

 演説と同じ時間帯に欧州首脳とウクライナ危機に関するビデオ会議に臨んでいたオバマ大統領は、ネタニヤフ首相の演説は聞いていなかったが、後に「この駆け引きに深入りするつもりはない」と一蹴。「私に言えるのは、新しい要素は何もなかったということだ」と切り捨てた。(c)AFP/Steve Weizman