最古の銀河で宇宙塵を初観測、初期の星形成探る手掛かりに
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【3月3日 AFP】観測史上最古の銀河の一つを観測した結果、宇宙初期に宇宙塵(じん)が決定的な役割を果たしていたことが判明したとの研究論文が2日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。
宇宙塵粒子は、宇宙を構成する極小の要素。炭素、ケイ素、マグネシウム、鉄、酸素などでできた塵粒子は、恒星の核燃焼で形成される。
星が燃え尽きて爆発すると、塵粒子は宇宙空間に噴出される。長い年月の間に、塵とガスでできた雲が合体し、新たな星系が形成される。
これまでの理論では、誕生間もない宇宙にはこの役割を担う塵粒子が存在しないため、初期銀河はガスで形成されたに違いないとされていた。
だが、デンマーク・コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)のダラク・ワトソン(Darach Watson)氏率いる天文学者チームが行った今回の最新研究は、塵粒子がこれまで考えられていたよりはるかに早い時点から、形成過程に寄与していたことを示唆している。
研究チームは「A1689-zD1」と呼ばれる銀河を観測するため、チリ北部アタカマ砂漠(Atacama Desert)に設置された欧州の巨大天文台を使用した。
論文によると、同銀河から地球に届いている光は本当に太古の時代のものだという。時間と距離の測定基準となる「赤方偏移」は、光源の銀河が約131億年前、宇宙がビッグバン(Big Bang)で誕生してから約7億年後に形成されたものであることを示唆している。
またこの光にみられる特徴は、A1689-zD1が若い銀河であるにもかかわらず、天の川銀河(Milky Way)などのはるか後に形成された銀河の塵粒子に似た、複雑な塵粒子を豊富に含むことを示している。
「観測史上最も遠方にある銀河の一つで宇宙塵が発見されたのは今回が初めてだ」とワトソン氏は指摘する。また「銀河のサイズはそう大きくないが、すでに塵が大量に存在している。これは非常に驚くべきことで、これら銀河には予想よりはるかに早い時期から重元素が豊富にあったということが分かる」
A1689-zD1の赤方偏移は7だ。これまでに発見された最古の銀河塵の赤方偏移は3.2で、これは約125億年前に相当する。
今回の観測結果は、ビッグバンから約5億6000万年経過するまでに、A1689-zD1が星形成を継続的に行ってきたことを示唆している。「大半の星の寿命が数十億年であることを考えると、これは宇宙の時間枠としては非常に短い」とワトソン氏は話している。
A1689-zD1から発せられた微弱な光の捕捉をめぐっては、重力レンズと呼ばれる現象の影響が大きい。同銀河の微光は、地球に到達する途中で「Abel 1689」と呼ばれる壮大な銀河団の中を通過することで元の9倍に増幅されているという。(c)AFP