南極のコウテイペンギン、氷河期の寒さで個体数激減か 国際研究
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【3月3日 AFP】凍てつくように寒い気象条件に適応し、南極を生息地とするコウテイペンギンだが、気温が劇的に低下した最後の氷河期には寒さに苦しんでいた可能性があるとの研究論文が、2日の専門誌「グローバル・チェンジ・バイオロジー(Global Change Biology)」に掲載された。
豪タスマニア大学(University of Tasmania)の博士課程の学生、ジェーン・ヤンガー(Jane Younger)氏率いる国際共同研究チームは、過去3万年間に、全ペンギン種の中で体長と体重が最も大きく、寒さに高度に適応したコウテイペンギンに対して気候変動がどのような影響を及ぼしたかを調査し、最終氷期に同種の個体群がたった3つしか存在していなかったことを示唆する結果を得た。
ヤンガー氏によると、その後に気温が上昇に転じるにつれてコウテイペンギンは繁栄し、現在、はるかに多くの生息地に当時の7倍の個体数のコウテイペンギンが生息しているという。
同大の他、英サウサンプトン大学(University of Southampton)、英オックスフォード大学(Oxford University)、豪南極局(Australian Antarctic Division、AAD)などの科学者らが参加した研究チームは、現代と古代のペンギン個体群の遺伝的多様性を調べることで、個体数が時代を経るにつれてどのように変化したかを推定した。
その結果、個体数の増加は過去1万2000年の間に起こっていたことが分かった。この間、気温は平均約15度上昇し、南極周辺の海氷量も減少している。
気温が上昇したことにより、コウテイペンギンのひなが冬を生き延びる確率が高くなった可能性が高いとヤンガー氏は指摘する。氷河期の冬の気温は、マイナス45度にまで下がったと考えられる。
また、海氷量が多すぎることで、繁殖地が減少した可能性がある一方、海氷が縮小したことでペンギンが餌をとるために外洋に出やすくなったことも考えられると同氏は説明した。
「このことは本当に意外だった。氷河期は、ペンギンが(繁殖のために)必要とする海氷が今よりはるかに多く存在し、また寒さに高度に適応しているため、これはペンギンにとって好都合だったに違いないとこれまで考えられてきたからだ」と同氏はコメントした。
■「安全な場所」
気温が0度を上回ると熱ストレスを受ける恐れがあるコウテイペンギンは冬季に繁殖し、寒さが続く数か月間は雄が卵を足の間の安全な場所に入れて抱き、温める。
「たまに卵が氷の上に落ちることがある。(気温が上がった)現在では、あまり長く外気にさらされないうちに卵を元の位置に戻せば大丈夫だ」とヤンガー氏は話す。
「だが、氷河期には今より気温が約15度低かったため、卵は落ちるとほぼすぐに重大な危機にさらされたことが考えられる。また、卵からかえったばかりのひなについても同じことが言える。卵やひなは冬を通して温めておく必要がある」
論文によると、南極沿岸のロス海(Ross Sea)の領域で個体群が生き延びた理由は、同海域が風と海流の影響で常に海氷が存在しない状態だったからだと研究チームは考えているという。(c)AFP