【3月3日 AFP】西アフリカ・マリで、世界遺産都市トンブクトゥ(Timbuktu)の貴重な古文書の分類・デジタル化が進められている。イスラム武装勢力による破壊の被害は逃れたものの、マリ北部の砂漠地帯で乾燥に長年さらされていた羊皮紙の書物は劣化が激しく、このままでは消滅してしまう恐れがあるためだ。

 トンブクトゥでは、2012年4月にイスラム武装勢力が街を掌握し、世界遺産の古文書や寺院を偶像崇拝だとみなして破壊した。数十万点の古文書が保管されていたアフマド・ババ研究所(Ahmed Baba Institute)も2013年1月に放火された。

 だが、事態を予測していた研究所の職員たちが先回りしてトランクやリュックサック、米袋に古文書を隠し、3段階に分けて密かに街から運び出していたおかげで、サブサハラ(サハラ砂漠以南の地域)のイスラム文化の至宝である古文書群は焼失を免れた。

 この避難劇を計画し、今はマリの首都バマコ(Bamako)でデジタル化作業に従事する同研究所のモハメド・カディ・マイガ(Mohammed al-Kadi Maiga)氏は、イラクの文化遺産がイラク戦争後に略奪され荒らされたことが念頭にあったと説明する。「(持ち出す際に)見とがめられていたら、職員はみな両手を切り落とされていただろう」

 国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)によれば、トンブクトゥや周辺地域から運び出された古文書類は少なくとも37万点に上る。ただ、約4200点は焼かれたり破壊されたりして存在が確認できず、「計り知れない損失」だとユネスコ世界遺産センター・アフリカ課のラザール・エルンドゥ(Lazarus Eloundou)課長は嘆く。

 バマコの仮施設で保存作業を勧める研究所の職員たちは、保存処理が終わったら、古文書をトンブクトゥの地へ戻さなければならないと考えている。しかし、それを「義務で、責務」だと話すアブドゥル・カドリ・イドリサ・マイガ(Abdul Kadri Idrissa Maiga)所長は「だが、いつ戻すかが問題だ。まず、研究所を再建しなければならないし、最高レベルの警備システムも必要だ」と語った。(c)AFP