【2月27日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の戦闘員で、欧米人の人質らを斬首したとされる覆面の男、通称「ジハーディ(聖戦士)ジョン(Jihadi John)」の身元が、クウェート生まれで英ロンドン(London)に住んでいたコンピュータープログラマーの「モハメド・エムワジ(Mohammed Emwazi)」と特定された。

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)による複数の友人への取材に基づいた報道、外国人過激派戦闘員の研究分野を率いるシンクタンク、そして米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が引用した英治安当局者の話により、エムワジ容疑者が動画の覆面男と特定された。

 ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)の過激化・政治暴力研究国際センター(International Centre for the Study of Radicalisation and Political ViolenceICSR)は、この情報を「正確な」ものと捉えているとの見解を示している。同センターのシラーズ・メイハー(Shiraz Maher)上席研究員はAFPの取材に対し、「正しい個人の名前が挙がったと、かなり強く確信している」と答えた。

 メイハー氏は、「ISによって人質になっている米国人がもういない」と指摘し、「米国がこれを表に出そうと決めたのだと思う」と述べ、この情報が米国から暴露されたものであるとの見方を示している。

 一方、ロンドン警視庁(Metropolitan Police ServiceScotland Yard)はこの報道を「臆測」にすぎないとして、人命保護の観点から「身元確認は行わない」方針だとした。

 エムワジ容疑者と数年間にわたって接触があったという人権団体CAGEは、100%とはいえないまでも同一人物だと考えているとしている。エムワジ容疑者は治安当局から不当な扱いを受けていると訴えていたという。

 英国アクセントがあるためビートルズ(Beatles)の故ジョン・レノン(John Lennon)さんにちなんで「ジハーディ・ジョン」と呼ばれるようになったこの男は、米国人記者のジェームズ・フォーリー(James Foley)氏とスティーブン・ソトロフ(Steven Sotloff)氏、援助団体関係者で英国人のデービッド・ヘインズ(David Haines)氏とアラン・ヘニング(Alan Henning)氏、米国人のアブドゥルラーマン・カッシグ(Abdul-Rahman Kassig)氏を殺害したとみられている。日本人の人質の湯川遥菜(Haruna Yukawa)さんと後藤健二(Kenji Goto)さんが殺害される直前に公開された動画にも、2人と共に写っていた。

 米国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)は声明を出し、この報道について肯定も否定もするつもりはないとしている。

 エムワジ容疑者は中流家庭に育ち、コンピュータープログラミングの学位を取得していた。北西ロンドンのクイーンズパーク(Queen's Park)地区にある家族が暮らすとされる建物の外には、記者ら数十人が詰め掛けた。

 CAGEのリサーチディレクターによると、家族はこの情報を信じていないが、「完全なショック」状態に陥っているという。(c)AFP/James PHEBY, Katherine HADDON