「イスラム国」、イラクで古代の石像を破壊 動画公開
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【2月27日 AFP】(一部更新)イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」は26日、イラク北部モスル(Mosul)で貴重な古代の石像をハンマーやドリルなどで破壊する同組織の戦闘員を写した動画を公開した。
専門家や当局者らは破壊行為があったことを認めており、2001年のアフガニスタン旧支配勢力タリバン(Taliban)によるバーミヤン石仏(Bamiyan Buddha)の破壊に匹敵する被害規模だと指摘している。
動画では、IS戦闘員らがモスルにある博物館で、彫像などを台座から床へたたき落とすなどの破壊行為に次々と及ぶ様子が写っている。破壊されたものの中には、紀元前数世紀にさかのぼるアッシリアやヘレニズム時代の文化財も含まれるとみられる。さらに、同市ネルガル門(Nergal Gate)にあるアッシリア時代のものとされる大きな有翼の牡牛の石像もドリルで粉砕されている。
動画ではひげを生やした戦闘員がカメラに向かい、「イスラム教徒よ、私の後ろにあるこれらの遺物は古代人が神の代わりに崇拝した偶像だ」などと語っている。
専門家らは、破壊されたものの中には、文化財の原物や、破片を集めて修復したもの、複製が含まれるとしている。今回被害に遭ったのはアッシリア時代に作られたものや、モスルの南西約100キロの砂漠地帯にある古代都市ハトラ(Hatra)の遺跡から見つかったものなどもある。
■ユネスコは緊急安保理会合を要請
動画公開を受けて国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)のイリナ・ボコバ(Irina Bokova)事務局長は、安全保障理事会(UN Security Council)に対し、緊急会合を招集するよう要請した。
ボコバ事務局長は声明で、「この攻撃は、文化上の悲劇をはるかに超えるものだ。宗派対立、暴力的な過激思想、イラクでの紛争に油を注ぐという意味では安全保障問題でもある」「こうした理由から、安保理理事長に対し、イラクの安全保障上の重要要素としての文化財保護を協議する緊急会合の招集を要請した」としている。
また同事務局長は、動画の中で破壊されている像の一部は、ユネスコの世界遺産(World Heritage)であるハトラ遺跡のものであり、この破壊行為は国連安保理決議2199に抵触すると指摘している。(c)AFP(c)AFP/Jean Marc MOJON